UMAMI 作り手物語 だしについて

【作り手物語】阿波の国 一夜だし膳 〜河口 晶〜

投稿日:2019年11月12日 更新日:

作り手物語、第二回目は徳島でだし伝道師として精力的な活動を続けていらっしゃる河口晶さん。煮干しと昆布を水出し用にチューニングして使いやすいだしパックをクラウドファウンディングで商品化しました。煮干しと昆布が姿のまま入っている1回分ごとに小分けされただしパック。ありそうでなかった全く新しい一品。その当時を振り返って誕生秘話のお話を伺いました。

 

阿波の国一夜だし膳、誕生ストーリー

編集部:河口さんこんにちは。河口さんとは以前鰹節のマルサヤさんで行われたそばつゆの講座や、枕崎のツアーでご一緒しましたね。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

河口:どうぞ、よろしくお願いします。

 

編集部:ではさっそく質問に移らせていただきます。まず、「阿波の国一夜だし膳」という商品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

河口:はい、以前あるイベントで徳島のお味噌屋さんとご一緒することがありました。そのとき、お味噌屋さんが「徳島の伝統的なお味噌の『御膳みそ』にあうだしパックが欲しい」とおっしゃいました。御膳みそは米味噌で米麴の割合が高く上品な香りが特徴です。かつお節のおだしだと、かつおの香りが先に立ってしまうので、お味噌の香りが前面にくるようなだしがあるといいなぁということでした。

そこで、ひらめいたのがいりこ(煮干し)でした。徳島は瀬戸内海の良質ないりこが手に入ります。また、だしソムリエを通じて知り合ったいりこの漁師さんから、いりこの消費量が減っている現状を伺っていたこともあって、いりこを使っただしパックを作りたいと思いました。

私はだしソムリエなので、「おだしを伝えるだしパック」をコンセプトに、通常の粉末のだしではなく、素材が見えるようにしました。粉末だと原料がなにかわからないからです。だし教室をしている中で、昆布といりこは水出しでおいしい出汁がとれることがわかっていたので、水出しのだしパックにしました。

 

編集部:なるほど、原点は味噌汁だったのですね。それで、実際にプロジェクトを始めてみていかがでしたか?

河口:だし教室では、普段、いりこだしから始めています。良質ないりこを多くの方にお伝えしたいからです。その中で、煮出したいりこだしと水出しのいりこだしの飲み比べをすると、意外なことに水出しのいりこだしの評価がとても高いことがわかりました。

そこで、水出しのだしパック、という方法をとることにしました。水出しにすると、それまでいりこを扱うことが苦手だった方も、得意な方も同じ作り方になるので味のばらつきがなくなりました。

 

編集部:たしかに、慣れていない方には水出しの方が煮干し特有の臭みも少ないし、失敗もしないので、入りやすいかもしれませんよね。

河口:そうなんです。でもシンプルな素材だけに、その割合や材料の吟味、扱い方など料理人の山田さんと一緒に何度もテイスティングをして作っていきました。

 

編集部:なるほど、ご協力者もいらっしゃったのですね。

河口:はい、徳島県味噌工業協同組合さん、だしの老舗花菱商店さん、郷土料理観月茶屋料理長山田さん、管理栄養士の南部さん、私で満足のいくものを作り上げました。素材は花菱さんの目利きによるいりこと鳴門の昆布は漁師さんに直接買い付けしています。

 

編集部:鳴門の昆布ですか。あまり聞き慣れないですが。

河口:基本的には漁師さんが自家用にワカメ養殖と一緒に育てられて使われていることが多く、市場にはあまり出回らないようです。

 

編集部:だしの旨みは出るのですか?

河口:もともと鮑養殖の餌として鳴門で昆布が育てられるかを調べるために研究が始まったみたいです。海水温の上昇があるため、北海道のように2年かけて育てることはできないので、冬~5,6月にかけて育てる養殖栽培です。鳴門産昆布の成分を調べると、日高昆布と同じくらいのグルタミン酸量がありうま味のあるだしがとれます。粘りが強いのが特徴です。


編集部:へえ!知らなかった。鳴門の海流に揉まれて昆布も旨みを体内に凝縮するのかもしれませんねー。その後、試作をしていく中で苦労されたところはありますか?

河口:「こういうものがあるといいな」と頭で思っているものを商品にする際には、選択と決定の場面がたくさんあります。そのたびに「なぜこの商品をつくるのか」「誰にどう届けるのか」と何度も問い直し、答えをみつけていきました。初めてのことばかりで手探りで進んでいったので、苦労というより必死でしたね(笑)。

 

編集部:まさに産みの苦しみというやつですね。起業家と同じマインドですよそれ。クラウドファウンディングで資金を調達して商品化されたというのも、今時のスタイルで格好いいです。

河口:ありがとうございます。おかげさまで目標金額を上回るご支援をいただき、無事商品化することができました。

 

編集部:どれくらいの期間で作り上げたのですか?

河口:お味噌屋さんとだし屋さんと集まって相談を始めたのが2017年11月で、完成が2018年3月なので、4ヶ月ですね。

 

編集部:す、すごいスピード感。

河口:プロの方々が身近にいたことはとてもありがたかったです。販売していくうえでの必要な知識や覚悟も!あまりなく作っていったので、チームの方々からの時には厳しい質問から気づかされることも多かったです。必死で突き進んでいった感もありました。このだしパックは初めにビジネスコンテストで発表して、おかげさまで最優秀賞をいただきました。

 

編集部:勢いありますね〜。ちなみに、一夜だしというネーミングは最初からあったのですか?

河口:いいえ。一晩つけて作るだし、ということで一夜だしという名前をお味噌屋さんのアイディアからネーミングしました。

 

編集部:なるほど。パッケージデザインもおしゃれですが、ご自分で作られたのですか?

河口:いえ、デザイナーさんに作っていただきました。

5つの知恵が合わさっているので、5本の水引きになっています。

 

編集部:なるほど!5本の水引は単なる飾りではなくそういう意味もあったのですね。どうりでデザインに説得力があるわけだ。わたしもデザインをしているので、そういう部分の完成度はビシビシ伝わってきます。

河口:あはは、ありがとうございます。

 

編集部:実際に発売してみて、どのような反響がありましたか?

河口:いりこ(煮干し)のおだしがうま味はしっかり出ているのに、とてもすっきりしていることに驚かれます。また、気持ちがほぐれてホッとするとの感想もいただきます。

 

編集部:いいですねえ。だし冥利につきますね。どんな料理にあいますか?

河口:まずはお味噌汁やお吸い物でお試しいただきたいです。

煮物やだし巻き卵などの和食はもちろん、洋食や中華のおだしにもお使いいただけます。野菜のポタージュスープやミネストローネ、お肉やキノコと合わせて中華スープにしてもおいしいです。

 

編集部:へえ、オールマイティーですね。もともと御膳味噌用にチューニングした商品とのことですが、幅広く使えるのですね。

河口:はい、味噌汁もいろいろなお味噌で試してみましたが、どのお味噌でも合うと思います。ただ、一夜だし膳のだしは、水出しにすると他の煮干しだしに比べるとあっさりしているので、お好みで煮出していただけるとよいと思います。

 

編集部:ほかにもおすすめしたい部分はありますか?

河口:天然だしは難しそう、と思っている方におすすめです。水につけるだけなので、どなたでも天然素材のおだしが作れます。また、赤ちゃんの離乳食にも安心してお使いいただけます。

 

編集部:離乳食は良いですね。忙しいママでも水につけるだけなら出来ますし。

河口:離乳食の場合、煮干しのだしは生後9か月以降を目安にお使いいただければ、と思います。一般的には生後5か月頃から昆布や野菜のだしから始めると言われています。母乳のうま味成分はグルタミン酸が主で、昆布や野菜のだしのうま味成分と同じです。昆布や野菜のだしからスタートするのは、植物性でアレルギー反応が少ないと言われるほかに、赤ちゃんが母乳やミルクで慣れ親しんできたうま味という観点からも理にかなっています。昆布だしも水出しで冷蔵庫に常備できますので、ぜひご活用ください。

 

編集部:まさにまさに。これは是非若いお母さんに知らせてあげたい部分ですね。どこで買えますか?

河口:インターネットで販売をしています。また、Komerco(クックパッド事業)と徳島県内の店舗やイベントで販売しています。

 

編集部:ネット販売があれば、全国どこからでも買えるので良いですね!ぜひたくさんの人に買ってもらいたいですね。東京や大阪などでイベント出店など予定はありますか?

河口:いまのところ予定はないです。ぜひ呼んでください!(笑)

 

編集部:あはは、いつか僕と何か企みたいですね〜。ちなみに、河口さんといえば、いま他にも木桶で発酵させるメンマ作りなど、すごい活動をされていますよね。現在のことや今後やっていきたいことなどお聞かせいただけますか?

河口:木樽職人の原田さんと徳島唯一の村で地域おこし協力隊をしている宮岡さんと、私の想いが合わさって、木樽仕込みのメンマ「醸し竹」を作っています。

メンマは幼竹の発酵食品です。その発酵を徳島で作られている木樽を使って仕込みます。徳島県の竹を使い、木樽は杉を使い、味付けには出汁を効かせて作ります。『醸し竹』を作ることによって、竹やぶが竹林に変わり、杉問題の解決に繋がる。なくなりつつある木樽文化が少しでも一般家庭に普及出来れば、大変おもしろい活動になると思います。 先日、終了してしまいましたがクラウドファンディングのページから詳しくご覧いただけます。現在、返礼品のメンマ作りと来年からの商品化に向けて試作を重ねています。また、木樽仕込みのお漬物もこれから作っていく予定です。

あとは、外国人向けのだしと料理の教室を開催していきたいです。Udon Lesson(うどん教室)を開催予定です。四国八十八か所霊場を巡るお遍路さんや徳島県西部の三好市など、外国人観光客が増えてきています。集客はSNSやツアー企画、地元のコミュニティスペース利用を通しての発信などで考えています。

 

編集部:ひゃー。すごい。超人ですね。

河口:いえいえ、普通の人ですよ。

 

編集部:いや、全然普通じゃないっす。(汗) 最後に河口さんのプロフィールを教えてください。

河口:「素(オリジナル)を大切に」をモットーに素材からとるおだしをお伝えしています。あらゆる角度からおだしを研究。国内外の方々向けに教室、だし商品開発、だしと調味料ツアー企画、地域食の発信をしています。

 

編集部:今日はどうもありがとうございました。先日のうつぼだしの和田さんといい、徳島ってすごいぞ!!!

 

 

「徳島の食材の良さを知ってもらいたい、徳島が好き!」という想いをもって自然と河口さんの元に人が集まって商品が生まれた「阿波の国一夜だし膳」。作り手物語はまだ二人目の取材ではありますが、お二人とも地元への愛とそれをたくさんの人に知ってもらいたい、味わってもらいたいという強いモチベーションを感じました。河口さんも柔らかい物腰の人柄からは想像できないくらい活動的で、仲間を引き寄せて、そして実現していく。その姿はとても格好良く映りました。ぜひ「阿波の国一夜だし膳」をみなさんもお試しください。

 

Information

河口 晶

だしソムリエ認定講師

ウェブサイト:https://dashikitchen.com

Facebook:https://www.facebook.com/dashikitchen/

Instagram:https://www.instagram.com/dashi_kitchen_zen/

連絡先:dashikitchenzen@gmail.com

        090-4445-3748

 

-UMAMI, 作り手物語, だしについて

執筆者:

関連記事

【男の料理】煮干しメシを炊こう

みなさん、男の料理というと、どんなイメージをお持ちですか? おそらく、「簡単」「豪快」「適当」なんていうのが大体のイメージなんじゃないでしょうか。 チャーハンを強火でジャジャジャって炒める、みたいなの …

かつお節を巡るエトセトラ 3 〜どれ買ったらいいの?

お店にいくと、かつお節っていろんな商品があって、どれを買ったらいいのかよくわからない!! そこで、今日は、なにがどうなってるのか、パッケージから見るかつお節を解説します。 いろいろあっても2種類しかな …

目利きの仕事

最近、築地から豊洲に市場が移転したニュースで「目利き」という言葉をよく耳にすると思います。 しかし、この「目利き」ってなんでしょうか。 魚を外見で良い魚か悪い魚か見極められる目を持った人でしょうか? …

煮干しで作る八方白だし

最近は、白だしをよくスーパーで見かけるようになりました。確かに、料理に万能につかえて、茶色い色もつかないので、料理の見た目の邪魔をせずに旨味を足すことができるので、なかなか便利ではあります。私も時間が …

昆布が倒幕を助けた!かもしれない話。

先日、築地の昆布屋さんでいろいろ面白い話を聞けましたので、その一つをご紹介。 昆布が江戸時代から明治にかけて、倒幕を助けた!?かもしれないお話です。   もちろん直接的な話ではないのですが、 …

だしと発酵、暮らしに関するヒントをデザインの視点を交えてお届けします。

2019年12月
« 11月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031