だしと発酵、暮らしとデザイン

丁寧で本物の日本の次世代の食生活を提案する、ライフスタイルWEBマガジン

だしについて

かつお節の生産現場を見学して(焼津)

投稿日:

どうもこんにちは、気が付けば数年放置しているこのブログですが、SNSの投稿だとタイムラインに流れるとあとは忘れられていってしまうので、こういったブログという記事はアーカイブとして残しておきたいものにはいいのかもしれませんね。またときどきここにも書いていこうかと思っています。


さて実は、先日とある用事で静岡の焼津にいった際に、せっかく焼津に行くんだから、かつお節作ってるところも見たい!ということで、ネットで検索をしたところ、焼津水産加工センターというところが見学を受け付けていることを見つけて、申し込みました。

対応くださったのは、職員の長谷川隆人 さん。

個人で行って他に見学者も居ないにも関わらず、丁寧にご説明いただきました。

まずは、センター施設内のお部屋にてカツオ節の製造についての説明ビデオを見せてくれました。うんうん。いちおう、だし好きの私なので、ほぼ知ってる内容ではありますが、やっぱり面白い。

そして、いよいよ加工センター施設の現場見学に向かいます。

ここは、かつお節製造の各工程ごとに完全に分業されていて、それぞれが独立した会社になっていて、製造をしています。カツオを冷凍保存する会社、カツオを解体して大きな釜で煮熟するところまでやる会社、解体されたカツオから出てくる内臓や骨だけを集めて、カルシウム製品を作る会社、肥料を作る会社、煮熟したときに出る煮汁を集めてエキスを作る会社、燻すだけの会社、などなど、全ての工程ごとに特化した会社が集まった工業団地のようなところ。

ほへー。。。

なんか、手作りのこだわりのかつお節職人の世界とはまた別の、効率良く大量にかつお節を作っていくかに特化した施設群な。知らない世界。

いいものを丁寧に少量作るという世界がある一方で、たくさんの人が毎日手軽にそれなりに美味しいと思える日本の味を支えるための舞台裏としては、こういう生産現場もあるのですよね。

どちらも人間社会においては必要なもので、良い悪いで判断されるものではないのかなとは思っています。

現場では、多くの海外の技能実習生が働き、ロボットではできない手作業を黙々と続けていました。

私は長谷川さんに聞いてみました。

「やっぱりこういう現場で作業をする人材というのは海外の人になっちゃうんですか?

「そうですねえ。どんなに給料が良くても、やっぱりこういう作業は日本人はやりたがらないですねえ。だから、主に東南アジアからの若い労働者に助けられてやっています。」

とのこと。

そうなんです、これは枕崎でも見た光景なのですが、日本人はこういう仕事をもうしたがらなくなってしまったんです。まあ、もちろん自分だってこれを仕事にしろといわれたら、今はちょっと難しいかなと思うから。人のこと言えないけれど。だけど、いま、日本って相対的にどんどん国力が落ちていっている中で、むしろ海外に出稼ぎに行く日本人が居る中で、わざわざ日本を選んで働きに来てくれる外国人労働者の労働のおかげで、私たちは安くて美味しい食事ができているということは忘れてはならないのかもしれません。

実際、長谷川さん曰く、彼らは本当に真面目で良く働くそうです。フォークリフトや重機を動かす免許なども慣れない日本語の世界の中で取得して、より会社のためになるように働いている若者も少なくないそうで、そういう人たちを見ていると、なんだかヌクヌクと過ごしている自分たちが恥ずかしくなってしまいます。

かつお節は製造過程において捨てるところが一切ない。

というのは以前枕崎に行った時にも聞いたことがある話なのですが、骨などはカルシウムとして食品や飼料の原料に回されたり、その他の部位も発酵させて肥料や家畜の餌になったりしているのは知っていましたが、ここ焼津ではそれがもう完璧にシステマチックにこのエリア内で分業されていて、一工程が終わると、次々と別の業者に部位が回っていきます。

なんで別の会社になる必要があるのか聞いてみたところ、

やっぱり、それぞれの工程はそれぞれの専門分野であるから、一つの会社で全部やるよりもそれだけに特化した会社がそれぞれ切磋琢磨する方が良いとのこと。

なるほどぉ。わかったようなわからないような。

まあでも、人間の体だって内臓の機能はそれぞれの分野に特化したことを行っているわけだし、そういうもんか。

最近はフードロスの問題がよく言われていますが、すくなくともかつお節製造の現場においては、貴重な資源が捨てられるというのは無く、もちろん、まき網漁でカツオの群れを一網打尽にしてしまう枯渇型の漁法はどうなんだ、という別の議論はあるにせよ、獲られた鰹が無駄死にすることはなかったというのは救いに感じます。

最後にみせてくれた会社では、ご覧のような節を作っていました。

んん???なんだこれ。。形がかつお節の形じゃない。かりんとうのような、、ウ⚪︎コのような、、、長谷川さん、これなんですか?

「ああ、これはね、ネリ節といって、かつおの骨の周りの肉とか製造時にバラバラになっちゃった肉とかをまとめてミンチにして、それを普通のかつお節を作るのと同じように燻して作るんですよ。一般にはこの型で出回ることはないけれど、粉砕して業務用に出していて、だしの素とかだし粉とかそういったものに使われます」

とのことでした。

なんとーーー!それは知らなかった!

本枯節を作る時に、骨抜き作業の後に、骨があった部分にカツオのミンチ肉を詰めて型を修復するのは知っていたのですが、確かに、もっとずっと大量に作る荒節の残りの肉があるはずだよなあとは思っていたけれど、まさかこんな型で私たちの食事に入っていたなんて、全く知らなかったです。

いやー、これはすごいなあ。

これももちろん賛否両論あるものなのかもしれませんが、やっぱりフードロスという観点からは、一定の価値があるんじゃないかなと僕は思いました。

 

さて、次回はこのネリ節を、わがまま言って、特別にサンプルをいただきましたので、そのレポートをしたいと思います。

おたのしみに!

-だしについて

執筆者:

関連記事

めんつゆバカ一代 2

さあ、今日はそばつゆ作るぞ! 日曜日、いつも無計画に、心の声に忠実に、つゆ作りが始まります。 (といっても、昆布や椎茸の水出しの関係で、最低半日はかかるんですけどネ) 通常、専門店のそばつゆは、かつお …

出汁を引こう! 〜発酵宗田節

しばし、記事の更新をご無沙汰していましたが、情熱を失ってしまったわけではなく 単純に本業に忙しくしていました。(まだ忙しいけど、現実逃避) ということで、徒然なる出汁ライフのストックから、記事を書きま …

なぜ関西は昆布の文化なの?

西の昆布、東の鰹節 東西の食文化の違いはさまざまありますが、だしに関していえば、西の昆布、東の鰹節と言われるほどベースが異なります。(もちろん、関東も関西も鰹と昆布をあわせてより奥行きのあるだしを取り …

【MOTTAINAI】出汁ガラだって食材にしたい 1

日頃、日常的に出汁を引くという方にはきっと共感を持ってもらえると思いますが、 出汁ガラの処理にはいつも悩まされます。 だって、捨てるの勿体無いじゃないですか。 出汁に栄養分は数パーセントしか溶け出して …

関東大震災と昆布

今日は、昆布のトリビア話。   もともと東京には昆布で出汁を取るという文化はありませんでした。 これは、流通の関係だったり、利根川水系の水質の問題だったり、濃い味好きの江戸っ子の問題だったり …

だしと発酵、暮らしに関するヒントをデザインの視点を交えてお届けします。

2025年5月
« 1月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031