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UMAMI だしについて

かつお節厚削りは、煮出した後に放っておくべきか問題

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だしに魅せられてどこまでも突き進む。

本日は、かつお節の厚削りを煮出して出汁を取るときに、どのタイミングで厚削りを取り出すべきかという、大変由々しき問題を検証してみたいと思います。

おそらく日本に数万人単位でこの問題に直面している人が居るのではないかと考えております。(希望的観測)

なお、今回の記事もあくまで私一個人の根拠のない考察と、発想に過ぎませんので、異論反論がありましたら、全部受け止めます。そんで、間違っていたら謝ります。面倒くさいので、最初に謝っておきます。ソーリー。

厚削りは長時間煮出すジャンルだから・・・

では、そもそも、今回この考えを思った原点からお話したいと思います。

まず、かつお節というのは、一般的に多くの人が思い描いているヒラヒラした薄っぺらい焼うどんの上でダンスしているイメージのものがほとんどだと思います。

しかし、ひとたび、出汁という世界にちょっと足を突っ込んで学んでみると、あれは削り方によってそうなっているだけで、実はいろいろあるんだということに気がつきます。削る厚みみよって、いろんなかつお節が存在しています。

というか、そもそもかつお節っていうのは削られたものを指すのではなく、削る前の節の状態のことをかつお節というのであって、正しくは、かつお節の削り節というのが正しいのであって、云々(中略)

  

で、厚削りというのは厚さが0.5ミリから1ミリ程度の厚めに削ったやつなんですが(関東)、これは何に使うかというと、コトコト長時間煮出して濃いめの出汁を取るときによく使います。蕎麦つゆとかに良いですね。

薄い削り節を煮出すのと何が違うかというと、薄削りは薄い分水に触れる表面積が多くなるので、すぐに出汁が抽出される反面、長時間煮出すと魚特有の臭みやえぐみといった別の要素も出やすくなります。

一方厚削りは表面積が少なくなるので、長時間煮込んでもそういった雑味があまり出にくいと言われています。なので、香りはさておきうま味を取り出したいときにはこちらが一択です。

しかし、出汁のことをネットで調べると、ほとんどが薄削りの出汁の取り方ばかりではないでしょうか? 厚削りに関して詳しく言及されている情報というのはほとんどないと言っても過言ではありません。

そこで、私筆者は、出汁界のブルーオーシャンを目指して、厚削りにとことん入れ込んでみようじゃないかと思った次第なのです。

 



いつが引き上げ時なのか問題

では、この厚削りですが、大体どれくらいの量をどれくらいの時間を煮出すといいのか、さっぱりわからん!というのが出汁スターターの悩みどころ。人によって時間も温度も言うことがバラバラ。何を信じたらいいのか。。。ということで出汁業界は自ら勝手にハードルを上げているとしか思えません。

 

持論結論から言いますと、「己の舌を信じろ」

 

というしかないのですが、とにかく出汁を取りながら、ちょいちょい味見をしながら、「きた!」という味わいになった時が止めどきだったりする世界だったりします。

しかしそんなことを言ってしまうと記事を書く意味がなくなってしまうので、一つの見解をお伝えしたいと思います。

まず、使う分量は薄削りと変わらずに水に対して2〜3%の重量。つまり1リットルの水であれば20〜30g。ただし、長時間煮出すので、蒸発によってかなり目減りするので1.2リットルくらいの水を入れておくと良いでしょう。

そして煮込む時間ですが、世間で言われているのが15〜20分くらい。出汁の出方には個体差もかなりあるように感じます。

しかし、実は、私は15分くらいコトコト煮込んでも、「キター!!!」と言えるくらい深いうま味が出ていると思ったことがあまりなく、もっともっとたくさんの5〜6%の重量を入れると「キター!!」となりやすいのではありますが、それは単純に出汁素材の分量が多いから濃く出たというだけであって、本来の薄削りと同じ重量の出汁の「キター」と比べるとむしろ薄く感じてしまうこともしばしばあります。

ある日、大根の煮物を作っていたときに、沸騰してグラグラとしていたときにはいつまでも大根が出汁と一体化せずに味が入らなかったのが、火を止めて常温になっていくときに味が染みていく様子を見て一つの考えが降ってきました。

「厚削りも、火を止めて常温になるまで放っておいたらいいんじゃないか?」

そう、つまり、どれだけグラグラ高温で長時間煮込んだところで、いつまでもお互いが興奮した状態のままだと、あまり意味がないんじゃないか。であれば、一旦冷ましていったときに出汁と鰹節が一体化して味が出てくるんじゃないか。

つまり完全にお互いが垣根を無くしたフラットな状態になっていくことで本来の出汁素材がもっていたポテンシャルが均等に行き渡るハッピーワールドが広がっているのではないかと。

個人的にはこの手法に一択。

ということで、厚削りを15分程度煮込んだあとに、出汁素材を取り出さずに火を止めて常温になるまで放置しておくと味わいがどう変わるかというのを実験してみました。

すると、15分程度煮出してすぐに取り出した出汁と、そのまま素材を放置したあとに取り出した出汁では明らかな違いがありました。

ともに薄削りのような香り豊かな出汁ではなく、より力強いうま味重視の出汁ではありますが、口に含んだ後に残る余韻というか雑味というか、ふくよかさというか、やはり放置バージョンのほうがよりその傾向が顕著に現れるように感じました。

よりまったりとはんなりとした感じが放置バージョンの方には感じられます。引き立ての出汁のフレッシュなスッキリ感はありませんが、場末のスナックのママが作ってくれるハイボールのような独特の空気感。ここは東京銀座ではなく、地方都市の○○銀座。昔はママも東京ではお店のナンバーワンを争うほどに夜の世界を渡り歩いて来たけれど、いろんな男に出会い、そして騙され、流れに流れいきついた安住の地。しかし、生まれ故郷には訳あって帰れない。そんな複雑かつ人間味あふれる味わいがこの放置タイプの出汁には感じられるのです。(は?)

えーと、、、

 

何度で何分が良い。

とか。

もういいじゃないですか。

じんわりとおいしいのが正解なわけですよ。私思うに。

この出汁を使っておでんを煮込むと最高においしいのが出来上がります。各種煮込み系のベースには最適です。

ということで、最後はまとまったのかなんなのかよくわかりませんが、とにかく常温になるまで放置プレイを一度やってみて欲しいのです。

本日もお付き合いありがとうございます。

これからも出汁のブルーオーシャンを目指して突き進みます。

-UMAMI, だしについて

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