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かけ蕎麦を頼むと、主人にマークされる

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かけ蕎麦は、蕎麦屋の出汁の実力がストレートに現れる

かけ蕎麦というと、どうしても「一杯のかけ蕎麦」の物語を思い浮かべてしまって、なんだか、貧しい人、可哀想な人の食べ物、というイメージが強くて、なかなかお蕎麦屋さんで頼むのは躊躇してしまいがちです。まわりのお客さんが天ぷらそばだの鴨南蛮だの頼んでいたら、なおさら目線が気になって頼むのに勇気がいります。

しかし、出汁の観点からすると、かけ蕎麦こそ店の実力が試される、蕎麦屋の主人にとっては緊張の一杯なんだそうです。

たしかに、具がない以上食べる人の意識も出汁にしかいかないですからね。出汁と向き合う一本勝負ですよね。

出汁を引くのって、お店にとっては毎日のことではありますが、やっぱり素材と手仕事のたまものですから、工業製品のようにまったく同じものを量産するのって難しいんです。もちろんプロですから、ブレが少なく、店の味ってのをキープしますので一定の水準はクリアできているとは思います。でも、やっぱり毎日ずっとやっているとダレてくるというか、70点くらいでまあ合格にしちゃうこともあると思うんです。だって、天ぷらだの卵だのいろいろ乗っかれば、蕎麦つゆのあの感じが出てればごまかせますし。

ということで客が「かけ蕎麦」を頼むと緊張するんです。(まあ、客が店を見るように、店も客を見ますから、味にこだわりのなさそうな人がかけそばを頼んでも別になんとも思わないかもしれないですどね。)

ちなみに、蕎麦屋でシンプルな蕎麦といえば、「ざるそば」もありますが、

こちらは、つけ汁の味が濃いですので、多少出汁が雑でもなんかごまかせちゃったりします。わさびとかネギとか入れちゃえばもう知ーらないって感じですから、こちらは、どちらかというと出汁というよりは、蕎麦そのものの香りやのどごしを楽しむ食べ物として、蕎麦の麺としての出来をジャッジされてしまうものですよね、これはこれで緊張の一皿かもしれませんが、蕎麦屋の主人は、そもそもそば打ちに精魂込めて作るでしょうから、こちらは自信をもってお出しするんじゃないかなと予想。だって、蕎麦屋で蕎麦に自信がなかったらお店畳んだほうが良いですからね。

そんなわけで、かけ蕎麦なんて、めったに出ないでしょうから、注文が入ると

「お、どんな客が注文したんだ?くせ者が来たな、てやんでい」ということです。

なので、かけ蕎麦を頼むと主人にマークされます(笑)

(マークされるレベルの客に見えるようになりたいものです。)

蕎麦屋で一人飲みの憧れ

蕎麦屋といえば、やっぱり、一人飲みに憧れちゃいます。

ちょっと前まで憧れの飲み方のイメージはこうでした。

板わさと日本酒1合でちょいちょいはじめて、途中に出し巻や揚げ物、焼き物など気になった1〜2品を頼んで日本酒をもう1合。文庫本などを読みながら、ゆっくりとした時間を過ごします。ほろ酔いになったところで、せいろを一枚、ズズっと威勢よくひっかけそば湯を飲んでさっそうとお会計。長居はしすぎない、ああ、かっこいい一人ダンディズム。

なーんて思っていましたが、これ、出汁の観点からすると、全然NGです。

まず、いきなり日本酒から始めちゃう時点で、味覚が緩んで雑になっちゃいますから、出汁をしっかり楽しむ土台が崩壊します。(お酒は美味しいかもしれませんが)そして、何品かのつまみも、酒のあてになるような塩気の多いものばかり。もう舌は完全におバカに。せいろでそばつゆをちょっとだけつけて粋にすすったところで、どうせお酒回ってますから、食べ終わったあとにもうちょっと塩気が欲しいなとなり、そば湯を飲むことにかこつけてつゆもたっぷり溶いてグビグビ飲んじゃうわけで塩分過多。それなりに高揚感と満足感のある食事となりますが、これでその店の出汁を語ってしまうようではダメです。そういう飲み方も好きですが、居酒屋で飲むのと変わらないというか、かっこつけすぎかも。あなたが思うほどだれもあなたのことなんて見てませんから。と、自戒の念をこめて言いたいです。(自分かよ)

で、まだやったことないですが、出汁を味わうならたぶんこうかも。

まず、かけ蕎麦と天ぷら盛り合わせを別で頼みます。かけ蕎麦を半分ばかり出汁とともに頂きます。その後、日本酒を1合頼みます。天ぷらを塩で食べたり、出汁をくぐらせたりして食べて、具材の加わった出汁の感じも楽しみます。なんなら七味なんかもこのあたりで入れちゃってもいいです。お酒は後半からペースをあげて、最後に香の物を頼んで、お茶で締めます。

こうすることで、出汁そのものをシラフでしっかり味わえますし、後半は油っ気のあるものをいれることでこってり感が加わって、別の食べ物として変化を楽しめます。これなら、1回で2度美味しい食べ方ができます。まあ、いきなり主食からはじめる食べ方ってどうなんだろうとか思うところもありますが、今度このパターンをトライしてみようと思います。

もっとおすすめの手順があったら、誰か教えてください。

かえしも蕎麦屋のアイデンティティ

さんざん、出汁のことを言いましたが、蕎麦屋は出汁だけでなく「かえし」も大切な要素。

かえしとは、醤油とみりん、砂糖を煮切って寝かせたもので、出汁と混ぜることでそばつゆが完成します。

これは代々受けついで継ぎ足して使っていたり、店のこだわりと味わいが現れるものですが、その店のスタイルが確立していれば、味は安定していますので、ブレは少ないと思います。結局はこれらのハーモニーがうまく調和がとれているかがトータルとして美味しいかどうかに繋がりますので、出汁ばっかり語って知ったかぶりするのもどうかなと思いましたので、そろそろこのあたりお話をおしまいにしようと思います。

最後グダグダになりましたが今日のお話は、たまにはかけそばを頼んでみたらどうでしょう!意外と新しい発見があるかも!?

という提案でした。ちゃんちゃん。

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