そういえば、糠漬けってなんだろう
みなさん、糠漬け好きですか?
程よい酸味と、独特の香り、美味しいですよね〜。
でも、なかなか糠床を世話するのはタイヘン。毎日かき混ぜないといけないっていうのは聞いたことありませんか?
だから、お家で毎日漬けているっていう家庭もそんなに多くないんじゃないかと思います。
最近はスーパーでもそれっぽいのは買えますし、わざわざ作らなくてもいいですよね。
まあ、それはさておき、
糠漬けってメカニズムを知ると、実はすっごく面白いんです。
なんでかき混ぜないといけないのかとか、これを知ったら、自分でもやってみたくなりますよ〜。
ということで、今回は、糠漬けの菌が織りなすハーモニーをご紹介します。
糠床は、菌のバランスが命
糠漬けと聞くと「植物性乳酸菌」を思い浮かべる人も多いかと思います。
糠漬けは、糠の味を味わうというよりは、糠はあくまで乳酸菌の寝床。植物に付いている乳酸菌を培養する場所なんですよね。言ってみれば、乳酸菌を味わう食べ物なんです。
しかし!糠漬けは乳酸菌だけで済む話ではなかったのです!
糠漬けには主に3つの登場人物(菌)がいました。
- 植物性乳酸菌
- 産膜酵母
- 酪酸菌
これらが、かかわり合って、おいしい糠床になっていたのです。
ひとつひとつ見て行きましょう。イラスト描いてみました。
ということになります。
つまり、糠床の中は下記のようになっているのです。
この状態ですと、乳酸菌が全体的にいるので、糠床は強い酸性になります。
そうなると、雑菌(ウェルシュ菌やカビ類)を寄せ付けないので腐りません。
しかし、このまま放っておくとどうなるかといいますと
乳酸菌がどんどん増えて酸っぱくなります。漬け物が酸っぱくなるのです。
そして、さらに放っておくと、今度は酪酸菌が勢力を増して来ます。(乳酸菌より強いので)
そうなると、今度は乳酸の力が弱くなってしまい、酸度が下がってきますので、雑菌が繁殖しやすくなってきます。
ひとたび雑菌が繁殖し始めると、なかなか乳酸菌たちは打ち勝つことが出来なくなり、やがて、糠床は雑菌に覆われ、腐ってしまいます。こうなってしまうと、もうその糠床はダメです。
そこで、そうなる前に、糠床をかき回す必要が出てくるのです。
ということになり、そのままだと悪さをする菌を退治することができるのです。
同時に、産膜酵母は空気のない環境に入ることで「酢酸エチル」を作るのをやめて
香りの元となる「アルコール」や「脂肪酸」を作り出し、増えすぎた乳酸を食べてくれるようになります。
産膜酵母は「絶対好気性」ではなく「偏性好気性」に分類されるので、日和見的に立場を変えます。空気が無いと無いなりに別の活動を始めるわけです。
なんだかややこしいことを書きましたが、
つまり糠床をかき混ぜることで、菌の上下交換が行なわれて、
環境の変化によって菌が死んだり違う効果を発揮したりしていき、
糠床は雑菌を寄せ付けず、美味しさを増して、健全な状態に保たれるということなのです。
冷蔵庫がなくても、ずっと糠床があり続けられるっていうのは、こういう、菌の勢力の均衡を保つことでできていたわけです。
なんで毎日かき混ぜなくちゃいけないのか、これで分かりましたね。
そして、そんな日々の菌たちの勢力争いの均衡を保ってあげることが
美味しい糠漬けを作るポイントでもあったのです。
つまり、かき混ぜ方も、ただ混ぜれば良いのではなく、底と上を入れ替えるように、産膜酵母と酪酸菌が入れ替わるように混ぜるのがポイントだということも分かりました。
また、かき混ぜたあとは、糠床をポンポンと叩き、よく空気を抜いてあげるのが必要ということも分かりました。でも、表面にラップをして完全に空気に触れないようにしては産膜酵母が育たないことも分かりました。
(※酪酸菌は空気に触れると死ぬと書きましたが、正しくは休眠状態に入ります。)
お腹を整える最高の食べ物
このように菌たちの相関関係の行ったり来たりの結果つくられた糠漬けは
人間のお腹にとっても、ベリーグッドな働きをします。
もともと強酸性の乳酸菌ですから、胃酸にも耐えて、生きたまま腸に届きやすいのです。
腸に入った乳酸菌は、悪玉菌をやっつけて、腸内フローラのバランスを整えてくれます。
また、酪酸菌は短鎖脂肪酸と呼ばれ、脂肪の蓄積を防ぎ、脂肪燃焼効果を持つため
ダイエッターからは、「ヤセ菌」とも呼ばれています。
さらに、酪酸菌は、乳酸菌が生み出す酢酸との相乗効果で有害菌の発育を抑制したり大腸がんを抑制したりする
すごいやつで、サプリとかも売ってるくらいです。
でも、そんなサプリなんか飲まなくても、糠漬けを食べればいいんです。
昔の人は、お腹の調子が悪い時は、糠床をお湯で溶いて飲んでいたそうですから
経験的に知っていたのですね。
よく、糠漬けに旨味を足したいからと、煮干やかつお節を入れるという話を聞きますが、
動物性のものを入れるとバランスが損なわれる危険があります。
旨味はもともと植物性乳酸菌と産膜酵母が作ってくれます。
どうしても足りないようなら、昆布を足すと良いでしょう。
出汁マニアの私ですが、なんでもかつお節を入れれば良いってもんでもないんです。
私も毎日世話をして、10年20年、願わくば100年、マイ糠床を保って行けたらと思います。
糠床は20度くらいが一番バランスよく発酵が進むとのことなので、昨日から産膜酵母を育てるために、混ぜるのをちょっとだけ休止しました。今後が楽しみです。
[…] 以前、糠漬けに関して菌の説明は記事にしましたが、今回はより実践的な日々のメンテナンスの仕方です。 […]