今日は、毎日のぬか床の手入れ方法をご紹介します。
以前、糠漬けに関して菌の説明は記事にしましたが、今回はより実践的な日々のメンテナンスの仕方です。
なんとなく毎日混ぜればいいんでしょ?というイメージかと思われますが、混ぜる理由としては、乳酸菌の優勢を保ち、余計な腐敗菌が繁殖しないようにするためです。
混ぜないでおくと、底にたまった酪酸菌、表面にいる産膜酵母が過剰に活動してしまい、ぬか床の乳酸菌のパワーが落ちてしまい、結果的に腐敗菌の繁殖を許してしまいます。そうなってしまうと、腐ってしまうのでぬか床がダメになってしまいます。だから、混ぜるのはとっても大事な作業です。
底から表面に天地返しをするように混ぜよう
では、さっそくはじめてみましょう。
ぬか床に手を入れて、底からもちあげるようにして、混ぜていきます。
断面を見るとわかるのですが、上の空気が触れている部分はちょっと白っぽくなっていて、産膜酵母が活性化しているのが分ります。
表面はちょっとツンとするような匂いがします。
底のほうは、見た目はとくに変化はありませんが、よく例えられるのが、「半乾きの履いた靴下」のような匂いがします。
たしかに、言い当てて妙なのですが、本当にそんな匂いがします。これは酪酸菌の発酵する匂いです。
なので、ぬか床は混ぜ始めると、部屋にあの独特の匂いが立ちこめます。慣れないと、けっこうきつい。
よく混ぜて空気を全体に混ぜた後は、今度は、空気を抜く作業に入ります。
基本的に乳酸菌は空気が少ない環境を好みますので、ぬか床にふっくらと空気が含まれているのはよくありません。
手で、パンパンパンパンとたたいていって、空気を抜いていきます。
これは、実はけっこう楽しいです。
そして、たたき終わったら、雑巾で、ぬか床のまわりについた糠を拭き取ります
こうやって、丁寧に拭いていきます。キッチンペーパーでも良いのですが、毎日のことですので、専用の雑巾を用意しておいたほうが便利で経済的です。
この拭き掃除もとても大事でして、回りを汚くしていると、そこから雑菌が繁殖し始めたりすることがあります。菌の世界は、その環境で支配している優勢な菌が、他の菌の侵入を防ぎます。しかしその優位がこわれると、とたんに様々な雑菌の繁殖を許してしまいます。なので、なるべく環境を乳酸菌の優位に保ち続けるために、雑菌が繁殖するような要素を取り除いてあげるというのが重要になるのです。
これで、毎日のぬか床の手入れはおしまいです。かかる時間は2〜3分くらいです。
夏は朝晩2回、冬は朝1回まぜます。冷蔵庫にはいれません。
野菜を漬けていない日でも、毎日欠かしてはいけない作業になります。
ちょっと大変ではありますが、日々のルーチンに組み込んでしまえば、それほど苦痛ではありません。むしろ毎日面倒を見ていると、愛着が湧いてきたりします。日々の気候や漬けた野菜によって糠の状態は日々変わります。冬は、糠はちょっと暖かく感じますし、夏はちょっと冷たく感じます。菌の状態が良いと、朝の糠はちょっとふっくらして元気そうですし状態が悪いとちょっと匂いもキツくて、水っぽかったりします。いろいろなバランスのときがあるので、糠を足したり、水を抜いたり、塩を足したり、唐辛子を入れたり、などなど混ぜる以外の対処もあります。まあ、そんなこんなで手塩にかけて作りますので、出来上がった漬け物はとびきり美味しく感じますよ。
素手で混ぜよう
ちなみに、ぬか床をまぜるときに、手袋をして混ぜる方がいるようですが、ぬか床は素手で混ぜることに意味があります。
もちろん手はきちんと洗ってから混ぜますが、素手で混ぜることで、体についている様々な常在菌がぬか床に入ります。そうすると、乳酸菌はそれらのざまざま菌に負けないように乳酸菌自体が強くなっていきます。つまり、ちょっと過酷な環境においてあげることで、より強い菌になっていくのです。これが無菌の手袋で作業していると、純粋培養のモヤシっ子になっていってしまい、大きな環境の変化があったときに耐えきれなくなってしまいます。なんだか、人間も菌も同じですね。苦労知らずの優等生は環境が変化すると生きて行けないですから。
多少雑に扱っても挽回できる
お伝えしたメンテナンスは、たしかに毎日大変かもしれません。時には二日酔いでやりたくない時もあります。旅行でどうしても数日空けなくてはいけないときもあります。
そうやって放っておくと、ぬか床の状態はもちろん悪くなってしまいます。
でも、本当に修復不可能なまでに腐敗してしまうまでには、ある程度時間がかかります。なので、ちょっとダメになったくらいだったら、腐った部分を捨てて足し糠をして、野菜くずを入れて捨て漬けして乳酸菌を再度活性化することで、元の状態に修復してあげることが出来ます。これがぬか床の良いところ。普通、食べ物にカビが生えたらもう食べられませんよね。でも、ぬか床はその状態からまた元に戻せるという希有な存在なのです。多少の失敗は恐れることなく軽い気持ちでトライできますよ。
もともと、昔はどこの家庭でも普通に漬けられていたわけですから、そもそもそんなに難しいものではないのですから。
みなさまも、ぜひ!