以前の記事で、築地の鰹節屋さんは、荒節の鰹節を一般人には姿のままで売ってくれないと嘆いたことがありました。
その後、読者の方から連絡をいただき、ネット販売など入手できるところを教えてくれたりしたのですが、昆布だのポン酢だのぬか漬けだの別の記事にうつつを抜かして、なかなか荒節に手出しできずにいました。
そんなおり、先日伺ったかつお節のタイコウさんで色々なかつお節を見学させてもらった際に、味見ついでに見せてもらった荒節をありがたいことに分けていただけました。やったー。
ということで、願えば叶う!荒節ゲット!しかも極上のタイコウの荒節です。
心躍りながら、出汁を引くことにしました。
枯節と違って、綺麗にお化粧されていませんのでかなりそのまんまな感じです。骨も残っているのね。
周りの焦げや汚れは、タワシで水洗い。
こんな感じに綺麗になりました。
折ってみまして、折った面はこんな感じで、ビーフジャーキーのよう。
実際、このまま食べてもとても美味しいです。
さあ、削りましょう。
シュッシュッシュ。軽快な音と共に、ご覧のように綺麗に削れました。
水分が本枯節より多いので、削りやすいですねー。
ちなみに、一般的な荒節と比べるために、に●べんさんの一番オーソドックスな花かつおと比べてみました。
左がに●べん、右がタイコウです。
まず見た目がすでに違います。に●べんのは黄色がかってちょっと酸化したような感じ。ハリと艶もなく元気がない印象。一方タイコウの荒節は一枚一枚がしっかりとハリがあり色も薄ピンクで水々しい。まあ、削りたてとパック詰めのものと比べれば当たり前か。
しかし、何より食べたときの味が全く別物でした。
に●べんの方は、魚臭く、後味もえぐみや酸味が残ります。一方タイコウの方は、魚臭さが全くなく、旨味だけが口に残り余計な雑味がありません。ここは、巻き網と一本釣り、大量生産と一本一本手作りの違いが味として歴然と出ていました。もう出汁を取る前から勝負はついていました。
(もちろん、に●べんが悪いと言っているわけではありません。値段相応の品質なのだから当たり前であって、安いオーストラリア牛肉と松坂牛と比べたら松坂牛が美味しいに決まっているのと同じことです。例えば、お好み焼きのトッピングには、に●べんの荒節くらい強い魚の主張があったほうがソースに負けないB級感が出るでしょうし、TPOに応じて使い分ければ良いでしょう)
今回は1.6リットルほど出汁を取ろうと思います。
普通は1リットルで10〜20グラムくらい使うと思いますが、タイコウさんのかつお節は、イノシン酸の量も多いので、少なめでも充分に旨味が抽出できます。ということで12グラム削ってみました。
昆布出汁を沸騰させて。
火を止めて一呼吸置いたら、かつお節を投入。
この辺りのお作法も、安物は温度にもっともっと気をつけないと酸味や雑味が出やすいのですが、品質が良いものは、多少雑にやっても失敗しません。良い素材というのは、楽チンでもあります。
だいたい2分ほど静かに待てば完成。味見して、旨味が決まっていれば良いのです。足りなければ、削りを足せば良い。長く漬ければ良い。って感じです。
布で濾します。
若干濁りが出るのは、荒節によくある感じ。
今回は、シンプルに豆腐とネギとワカメの味噌汁にしてみます。
ああ、良い香りが立ちこめます。幸せだー。
完成!
いただきまーす。
これがね、うんまいですよ。はい。
もう味噌汁と白米があればおかず要らないくらいです。
日本人でよかったなあと思える瞬間。
荒節は匂いを楽しむ。枯節は香りを楽しむ。と言われます。
枯節の方がカビ付けの手間暇がかかっているからより美味しいというわけでもなく、荒節には荒節の力強い燻の香りと魚の味わいがあります。西日本と東日本でもかつお節の好みも違います。私は、味噌汁には荒節の方が合うんじゃないかと思っています。味噌は主張の強い調味料ですから、それに負けない強さが出汁にあると、ぐんと美味しく感じられるように思いました。
タイコウさんの荒節は、「だしはこれ」という削り節の商品として一般の方もご購入いただけます。通販はもちろん、全国のセンスの良い食材屋さんに行くと見かけます。普段の味噌汁を最高に美味しくしてみたい方は、ぜひ一度この「だしはこれ」を使ってみることをお勧めします。
他にも色々商品がありますので、詳しくはタイコウのホームページで調べてみてくださいね。
それにしても、削りたてってすんごく美味しい。
なんで姿のまま小売しないんだろう。家庭でも削りたてを楽しめるといいのに。
もっともっと削り器が普及したら姿で売ってくれるお店も出てくるかな。。
よし、今年は削り器を普及させるために、草の根活動をしよう!決めた。
ということで、
今日は美味しい荒節のお話でした。