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【ホンモノに会いに】かつお節のタイコウさんに行く

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今日はかつお節のお話。

日本で一番美味しいと信じてやまないかつお節があります。それは、東京晴海のかつお節のタイコウさんが扱うかつお節。

何が違うかと言いますと、世に出回る多くは、巻き網漁で獲れた鰹節。機械で大量生産されたものが主流となっている中で、近海で獲れた一本釣りの鰹だけにこだわって、手作り製法で作り続けている職人の宮下誠さんという方のかつお節だけを扱っているのがタイコウさんなのです。

このタイコウさんのかつお節は、以前出汁取り教室に参加して以来のファンでして、ここぞという時に使わせてもらっていました。

なんで一本釣りの手作りの鰹節が良いのかというのは、書くと長くなるのでここでは割愛しますが、とにかくもう普通の鰹節とは別格の美味しさと品の良さがあります。

しかも、ただ一本釣りだったらなんでも良いわけでもなく、熟練の職人が作って、それを一番良いタイミングで出せる目利きが居てこその価値が存在しています。

 

実は、今回、春先に企画を考えていまして、その相談があって伺ったのですが、社長の稲葉さんはお忙しい中、時間を割いていただき、色々と勉強になるお話や見学をさせていただけました。

ということで、今回はそのレポートを書きたいと思います。

 

かつお節屋さんの集合体、東京晴海。

東京晴海の一角に、古びた大きな建物があります。周りにはタワーマンションなども立ち並ぶようになり、ちょっとここだけ時代が止まったような空間。

ここが「東京鰹節類卸商業協同組合」です。東京中の鰹節屋さんがこの建物に入って居ます。

建物の周りを歩くと、普通にかつお節を天日干しして居たりします。のどかだ。

タクシーでちょっと行ったら銀座という場所なのにこの風景。自分がどこにいるのかわからなくなりました。

 

お、マルサヤさんだ。伏高さんだ。よく知っているかつお節屋さんが蜂の子のように入って居ます。

うーん。これはテンションが上がる。←私だけ?

建物の脇には小さな神社もありました。

社誌によりますと、明治20年に東京鰹節問屋組合が出来た時からの信仰で昭和46年に作られたということですから、50年近くですかね、やはり商売をする人にとっては神社というのは欠かせません。

私も、社長の稲葉さんに受け入れてもらえるように、お祈りしておきました。パンパン!

 

真の目利き、稲葉さん

まずはご挨拶とともに、こちらのお話をさせていただきました。

それでその話はその話で、ご理解いただけて、色々資料を貰えたり知らなかったこともたくさん教えてもらえました。助かります。

で、「せっかくなら、中見ていくー?」ということで、惜しげもなく、ぜーんぶ見せてくれました。

枕崎からどどんと送られてくる宮下さんのかつお節を1本1本見て、種類分けしていくんだそうですが、素人目には、大きい小さいくらいしかわかりません。。

「ここのこういうところの色を見てさ、ほらこっちの方が青紫っぽいだろ、でもこっちの方が身がしっかりしてるだろ、だから、こっちはこうで、あっちはああで」と見極めのポイントを教えてくれます。

 

なるほどー。わからん。

 

これはやっぱり目利きのプロに任せないと出来ない仕事です。

削り節用の荒節。

その場で折って、食べさせてくれました。

おおお。。。濃厚な燻された香りが口の中に広がります。

うまーい。

 

競りのフロアも見せてくれました。

ここで各卸売屋さんが希望の値段を入札して、一番高い値段をつけたところが買い取れます。

組合をつくるメリットていうのは、様々な産地から色々な節が一箇所に集まってくるっていうのが良いのかもしれませんね。

鰹節だけでなく、鯖節やメジ節、ムロ鯵節など、たくさん!

もう楽しくて、私はずっと目がハートになっていました。

「これでもね、随分お店減っちゃってねえ。今は、もう出汁は偽物の工業製品ばっかりなっちまったから、俺たちみたいなのがやっていくのは大変なんだよ」

とのことでした。

確かに、手間暇かかる割に、買ってくれる人、分かってくれる人減ってきてしまうと、商売としては大変ですよね。

この本物の日本の味、日本人なら絶対に美味しいと思える魂スープなのに。この価値をちゃんと伝えていくのも、私のような出汁野郎の役目かもしれません。

と、勝手に使命感に燃えて話を聞きました。

下に降りて、削り機も見せてもらいました。

って、二軒隣のお店なんですが、勝手に入っていって、「ほら、こんなやつだよ」と、自分の家のペットを紹介するように見せてくれました。

で、これがかつお節を洗う機械ね。

と、四軒隣のお店の機械を見せてくれました。

「これはね、一晩蒸してから削るんだよ。」

と、隣のお店の商品を紹介してくれました。

最後に、タイコウさんに戻って、自分のところの機械を見せてくれました。これは、洗った後に出てくるかつお節の破片。普通はゴミで廃棄処分になるそうですが、タイコウさんでは、知り合いの農家に送って、そこで肥料として使ってもらっているんだそうです。

「野菜ができると送ってくれるんだよねー。ありがたいよねー。」とのこと。

なんだろう、この循環。

凄く良いぞ。

 

さき程からずっと不思議だったのですが、別の会社の人も関係なく、みんな優しいんです。フレンドリーなんです。狭い業界みんなで盛り上げていこうよ、っていうのが根幹にあるのかな、助け合いの精神が宿っているように思います。

もちろん、お店ごとに商売のやり方や範囲もスタイルも違うでしょうが、なんだか大家族っぽい。

地方だったら今でもそういう感覚は当たり前にあるのかもしれませんが、ここ東京ど真ん中で、こういう価値観ってホント稀だと思います。

東京は普通他人のことなんか気にしませんもの。むしろなるべく関わらないようにしますもの。

稲葉さんが「昔、上に大問屋が居たんだけど、大手は使いづらい上の階を使ってくれて、我々みたいな小規模なところに1階の良い場所を使わせてくれたんだよ。自分たちは不便でも良いからって。今日本にそういう精神、なくなっちゃったよねー」

と言いました。なるほど。

 

ここは義理と人情で昔ながらの美味しいかつお節を守る最後の砦なのかもしれません。ここは江戸東京鰹節城。

良いな。すごく良い。

 

とっても良いものを見せてもらえました。

 

また伺いますね。

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