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UMAMI 作り手物語 だしについて

【作り手物語】うつぼ節 〜泉源〜

投稿日:2019年10月21日 更新日:

新しい連載シリーズをスタートします。題して【作り手物語】。全国で良質な食品や素材を作っている生産者に取材をして、その誕生秘話から想いや情熱まで、「だしと発酵、暮らしとデザイン」が掘り下げて取材していくインタビュー記事です。

第一回目は、徳島でうつぼ節を作った、株式会社泉源の和田智子さんにお話しを伺いました。和田さんは、だしソムリエ認定講師もされていて、精力的に活躍されている生産者です。

 

うつぼ節、誕生ストーリー

編集部:和田さん、こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いします。

和田:はい!よろしくお願いします。緊張しますね。(笑)

 

編集部:和田さんとは鹿児島の枕崎でお会いしましたね。その時はうつぼ出汁ですかー?なんて軽くスルーしてしまいましたが、よく考えたらそんな出汁聞いたことなかったので、今回1回目として適任だと思い、思わずお声がけさせていただきました。

和田:なんでも聞いてくださいね。

 

編集部:ありがとうございます。では、まずなぜうつぼで出汁素材を作ろうとお考えになったのでしょうか?

和田:徳島の牟岐町では産前産後の妊婦さんや授乳中のママが、うつぼを食べる習慣があるんです。うつぼには豊富な栄養があるといわれ、食べると風邪をひかないとか、健康な赤ちゃんを育み安全な出産ができ、母子ともに体調を崩さず元気でいられることが信じられています。この古くから町の人に親しまれてきたうつぼを、この地域だけではなく、たくさんの方に食べてもらいたいと思っていました。

 

編集部:へえ、そうなんですかー。徳島ってすだちと阿波踊りのイメージしかなかったのですが、もともと地元に根付いたお魚だったのですね。

和田:はい、私自身もこの町に住むまではうつぼの事について何も知らなかったのですが。そんな時、ご近所のおばあちゃんからお味噌汁の具材として「うつぼ」を入れる話を聞きました。
「うつぼからでるだしで充分美味しいし、だしをひかんでもいいんよいね。」と。
私の中のうつぼが 干物や天ぷら、たたき、といった 「食べるもの」から
「美味しいだし」に変わる瞬間でした。 
ここから美味しいだし作りがスタートしました。

 

編集部:面白いですね。その気づきの後、どんな風に始めていったのですか?

和田:まずは、うつぼについて調べようとしたのですが、資料、文献が少ないことから徳島県工業技術センタ-の協力を求めました。うま味成分である「イノシン酸」の値がうつぼ節にどれだけ含まれるのかを調べてみたんです。すると、イワシ節と同等、またかつお節以上のイノシン酸が含まれると分かり、新たな発見となり美味しいことが数値として表せたことで確信に変わりました。これは出汁素材になる!と。
そこから、春夏秋冬によるうまみ成分や脂質の変化。また、雄雌、魚体の大きさによる違いなどを協同で調べていきました。冬の方が美味しいと言われていたですが、実際には季節による変化はなく予想を覆す結果に驚いてました。

また、節にするときの煮熟の温度や時間、天日干しの時間と風乾時間、焙乾の温度や時間。だしとして使用する際に削るのか、粉砕するのか、思いつく限りのことを検討していき、評価していきました。

 

編集部:そんなにいろいろと試作していったのですね。すごい!

和田:ここでわかったことは、同じ工程でも、かける時間や温度によってイノシン酸の量が上下に変動するのです。これは当社で製造している干物でも同じことが言えるのですが、とても繊細な部分です。

完成までに3年半ほどかかりました。

やっと出来上がったと思った節の工程。これで完成したと思っていたのですが、美味しいけど、どうしても匂いが気になるところもあり、実は現在も改良を重ねていたりします。

 

編集部:なるほど、それだけこだわっていても、現在進行形でさらに高みを目指しているというわけですね。ちなみに、製法を見ると「炭火での乾燥」の工程があるようですが、これは焙乾というよりは焼きあごを作るのと似たような感じでしょうか? 燻製の香りはつかないということでしょうか?

和田:焼きあごは 炭火で焼く→天日干→風乾 ですが
うつぼは  煮熟→風乾→天日干→炭火乾燥
焼くというよりは、熱でしっかり乾燥させます。

ただ、匂いがどうしても気になるので、ここ最近は燻製の香りも付けています。

 

編集部:なるほど、順序が違うのですね。匂いが気になるというのは実際に味わってみたいところですね。

和田:ぜひ試してみてください。どうぞ。

 

編集部:では、一口。いただきます。 おお、これはかなり旨みが強いですね!甘みもあるように感じます。たしかに、ちょっとお魚特有の匂いはしますね。でも、どういう料理に合わせるかでプラスにもなり得る部分かもしれませんね。

和田:そうおっしゃっていただけると嬉しいです。まだまだブラッシュアップしていくつもりですよ。

 

編集部:頼もしいですね。ちなみに鰹節の本枯節ようにカビ付けはしないんですか?

和田:カビ付はしていません。身質の特徴が淡白なので、カツオのようにカビ付しなくても乾燥はしっかりできるのです。

 

編集部:ああ、なるほど。なんでもカビつければ良いってもんでもないんですね。

和田:そうです。魚に合わせてですね。

 

編集部:ちなみに、発売しているだしパックにはうつぼ以外の原料も入っているようですが、それはなぜですか?

和田:うつぼだけを入れるよりも、味に深みをもたせるためです。
ブレンドしているのが、飛魚なので流行にのったように思われると悲しいのですが、この時は他の12種類のブレンドを試しました。この中で、飛魚はうつぼの味よりも強くも弱くもなく、とても良いバランスでした。

 

編集部:12種類も試したんですか!すごいこだわりですね。

和田:私、凝り性なんです(笑)

 

編集部:実際に発売してみて、どんな反響がありましたか?

和田:まず、うつぼがだしになることで驚かれました。
うつぼが原料であることを隠して試飲してもらうと、ほとんどの方が美味しいと言われるのですが、うつぼとわかると先入観が出てしまうみたいで、反応は心が折れそうになることもありました。。。

 

編集部:どんな料理におすすめでしょうか?

和田:濃い風味の料理に負けないので、チゲやカレ-も美味しいです。
一方で、炊き込みご飯や、だしで伸ばした「とろろごはん」もおすすめです。

 

編集部:なるほど、それは美味しいそうですね。うつぼ出汁はどこで買えますか?

和田:会社に直接ご連絡ををいただくか、もしくは「日和佐道の駅」で購入していただけます。

 

編集部:まだまだレアな商品なんですね。これは新しい出汁を探している料理人さんにも試していただきたいですね。東京や大阪でも紹介できる場があるといいですね。

和田:そうですねえ。 あ!そうだ。11月に東京の物産展に出店しますよ。詳しくはページ下をご覧くださいね。

 

編集部:今後さらに何かやっていきたいことなどありますか?

和田:うつぼのだし以外に、赤じゃこ、はもといった珍しいだし素材を製造販売しています。来年は出羽島ア-ト展が開催されるので、そこで うつぼだしなど、地元の美味しさを知っていただければいいなと思います。

 

編集部:赤じゃこ、はも!?それも興味湧きますね。今後のご活躍に期待です。最後にお店のプロフィールを教えてください。

和田:創業140年 現在七代目の社長のもと、30年以上働いてくれている目利きのするどい社員さんに支えれられ、新鮮な鮮魚を徳島から京阪神、豊洲などの市場へお届けしています。
良質の鮮魚を干物や煮干に仕上げる早さと技術が受け継がれ、これまで続けてこられたのも先代の知恵と経験の積み重ね。
このことを忘れず感謝し、私たちがこれからできることをしていきたいと考えています。

 

編集部:創業140年のお魚屋さんだったのですね。すごい老舗なのに、こんなに新しいことにも挑戦していて、驚きました。今日はお忙しい中どうもありがとうございました。

和田:こちらこそ、ありがとうございました。徳島にも遊びにいらしてくださいね。いいところですよ。

 

 

ということで、今回はうつぼを見事に節に変えてしまった和田さんにお話をお伺いしました。まだまだ出汁の可能性を感じたインタビューとなりました。素材への好奇心、探究心、地元への愛を感じました。次回、実際にうつぼ出汁を取るレポートもしてみようと思います。また、今後、このコーナーではさまざまな情熱的な生産者にインタビューをしていく予定です。どうぞご期待ください。

 

お店情報

株式会社 泉源

徳島県海部郡牟岐町大字牟岐浦字浜崎177

Tel:0884-72-1136

E-mail:info@izugensakana.com

ホームページ:http://www.izugensakana.com


 

出店情報

2019年11月16日(土)17日(日) 10:00〜17:00

桜新町商店街 物産展(東京・世田谷区)

2日目は売り切れ次第終了とのこと。気になる方はお急ぎください。和田さんにお会いになったら、ぜひ「だしと発酵、暮らしとデザイン」を見てきましたとお伝えくださいね。

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