うまみ調味料のお話。
味の素を代表とするうまみ調味料は、いわゆる「化学調味料」と言われるもので、いまや表面上は多くの人から嫌悪されている存在。とくに出汁を自分で取っている人に取っては目の敵のような存在です。成分としてはグルタミン酸ナトリウムで、旨味成分そのものです。ぺろっと舐めてみると、口の中にまとわりつくような辛いとも甘いともいえない独特の感覚が広がります。まさに5番目の味覚の「うまみ」が受容体に反応している感覚です。
これらは、「化学」という言葉がなんとなく「体に悪そう」というイメージを連想させて、どうにも悪者になっています。
しかし普段何気なく食べているお惣菜やコンビニの食事にも、実は沢山入っていて「調味料(アミノ酸等)」と書かれているものは、全部このうまみ調味料のことです。「化学調味料」と書くとイメージが悪いので言い方を変えているだけで、一昔に比べて最近の食事がヘルシーになったわけでは全くありません。化学調味料を嫌悪しているわりに、知らず知らず多くの人が日々口にしているのが現状です。また、酵母エキスやたん白加水分解物など、化学調味料じゃないけど、化学調味料的な働きをする、ドーピング食物もたくさん入っていたります。
なんでそんなことがされているかというと、天然素材だけでそこまでおいしさを出そうとすると、とてもコストに見合わないので、安くて美味しいものを消費者が求める以上、メーカーはそれに応えるためにはそういう手段で対処するしか無いという現状です。
化学調味料を表面的には嫌悪しながらも、安くて美味しいものを求めるパラドックスが生み出した変な状況がいまの日本の外食中食文化を形成しています。
では、化学調味料は体に悪いのでしょうか。
いろいろと調べてみると、健康に悪影響があるほど悪い物質でもないようです。もちろんいろいろな実験で、頭痛が出ただの、低体温になっただのありましたが、それはある条件で過剰摂取したときの話で、適量を使う分には問題はありませんでした。しかし旨味が化学的に人工抽出されたというその存在の「イメージ」が、なんとなく体に悪いという世界観を作ってしまっているところはあるかと思います。
では、気にせずどんどん使って良いかというと、そこはまたそうでも無いのです。
実は、このうまみ調味料を使い始めると、どんどんその使い方が加速してしまう傾向があるのです。そこに一番の問題があると考えます。加速すると、人はどんどん旨味に舌が慣れて鈍感になっていきます。本来は大きなお鍋に耳かき一杯程度で充分に足りるものなのに、それ以上料理に加えてしまいがちなのです。しかし沢山入れたからといって美味しさが増すわけではありません。味覚としてはある一定以上を超えると、その先は感じなくなってしまいます。塩や砂糖だったら沢山加えたら、加えただけ変化しますが、旨味に関してはある地点を境にそれ以降は振り切ったままになってしまうのです。しかし、毎日の繰り返しだと人はそこに気がつかないので、どんどん入れればどんどん美味しくなるのではないか、という思いにかられて、気がつけば少しづつ使う量が増えていってしまいます。そして、いつのまにかうまみ調味料を入れないと料理がまずくなるのではないかという不安が勝ってしまい、入れないと落ち着かない、一種の恐怖症状態になってしまいます。
依存症ともちょっと違います。自分自身の経験にも思い当たる節がありまして、ある日卵かけご飯に味の素をかけたら、とても美味しかったという経験がありました。それ以降、たまごかけご飯には醤油の他に味の素が欠かせなくなってしまいました。そしていつのまにか、卵そのもののコクや味わいを楽しむというよりは、卵にまとわった旨味を楽しんでいる自分がいました。毎日食べないと落ち着かないということはないのですが、たまごかけご飯を食べるなら入れないと何となく不安、みたいな状態になっていました。この状態こそが、化学調味料の一番の害悪だと思っています。
そして、天然のやさしい旨味では物足りなく感じてしまうという、うまみへの希求が、味覚をおかしくしてしまいます。味が濃くなくては美味しく感じられない。うまみが強くなければ美味しく感じられない。という状態がどんどんと加速していき、気がつくと塩分含め調味料の過剰摂取になっていき、健康が害されてしまいます。また、繊細な素材の味わいを楽しむという豊かな味覚が失われてしまいます。
というのが、いま多くの人の口の中に起こっています。
結果として、貧相なジャンクフードしか美味しく感じられないという、残念なことに。さらに、今は若者だけでなく老人にもその味覚の鈍化が起きています。近頃は出来合いのお惣菜なんかが簡単に安く手に入りますから、一人暮らしの老人は一人分の料理をするのは大変なため、お惣菜を買うことが多いです。だから、そういった化学調味料にまみれた食事を多く食べているので味覚センサーがおかしくなって来ている人がかなり増えていっているようなのです。つまり、日本人の口内前線に異常あり!な状況となっています。
しかし、幸いなことに、人間には修復機能も備わっていますから、ある程度化学調味料から離れた生活に戻すと、本来の味覚は戻ってきます。もちろん、毎日の生活を無化調にするのはコストも手間もかかるので、ストイックにやるのは難しいとは思います。しかし、休肝日ならぬ休化日をつくることはできるかもしれません。まずは週に1日でもいいので、白米を炊き、ちゃんと出汁を取ったお味噌汁を飲み、青菜にかつお節と醤油だけのお浸し、塩だけで味付けした焼き魚やお肉を食べるという生活を入れてみてはいかがでしょうか。それだけでも随分違うと思いますよ。塩は最高の調味料、塩だけだと不安という強迫観念を捨てると、素材の美味しさに気がつけるようになります。
ちなみに、外で売っている漬け物は添加物のデパートなので×。梅干しも安物は×。明太子や練り物なども添加物のオンパレード。ハムやソーセージなども安物はすべて×です。裏面の表示を見てなるべく素材以外に入っているものが少ないものを選ぶのがベターです。このあたりは化学調味料とは別に「添加物」という別の問題も含まれるのでちょっと話が長くなってしまうので、今日はこれくらいにしますが、いろいろと便利な時代になった代償というものが、実は知らないうちに自分たちの体に入って来ているということがあるというのを今日はお伝えしました。
ま、結論として、出汁、発酵食品を取り入れたライフスタイル良いよ〜〜〜、おススメだよ〜〜〜っていうオチなんすけどね!!(←そこか!)
いや、まあ、でもホントに本物の美味しさを知った方が、人生豊かになりますよ!