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タレとつゆの境界はどこにあるのか

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「めんつゆ」と言うが「めんタレ」とは言わない、

「うなぎのタレ」と言うが「うなぎのつゆ」とは言わない。

タレとつゆの境界線はどこにあるのだろうか、考えてみようと思う。

 

まず安易に思いつくこととしては、「タレ」は「垂れる」くらいの粘度があって、ベタっとしたものをタレといい、さらさらっとしたものは「つゆ」というみたいな理解がされていると思います。もちろん、文字からしても、そういうことでしょう。webで調べてもだいたいそんなところ。

しかし、たとえば、天丼のタレはさらっとしていますし、ラーメンのスープを溶く前の濃い醤油もタレですが、これもさらっとしています。でも、こういったものも粘度はなくても、「つゆ」とはいわずに「タレ」といいます。そうなると粘度の違いだけが「タレ」「つゆ」の違いになるかといえばそうでも無さそうです。

 

では、塩分濃度から見てみるとどうでしょう。

「つゆ」は、そのまま飲み干せるくらいのいわゆる「スープ」の塩分濃度のものが多いと思います。一方、「タレ」は、塩分が濃く、そのまま飲むというよりは、なにかにつけたり、あるいはスープで伸ばす前の濃い液体のことをいうことが多いと思います。そうなると、気になるのが、何%以上の塩分濃度になったら「タレ」と呼ぶのか、という疑問がわいてきました。

 

一般的に、代表的なの塩分濃度は下記のとおりです。

 

●味噌汁:0.9%(血液の塩分濃度も0.9%)

●ラーメンスープ:1.2%前後(店やスープの種類によっても濃度はまちまち)

●めんつゆ(ストレート):3%(海水と同じ濃度)

●ポン酢:6〜10%(ものによってけっこうまちまち)

●すき焼き割り下:8〜10%

●かえし:12〜15%(味醂や砂糖などまぜる分量にもよる)

●醤油::15〜16%(醤油の種類によっても濃度はまちまち)

 

ということで、こうしてみると、「めんつゆ(ストレート)」あたりの塩分濃度までが、まあ飲める限界点ということで、ここまでが「つゆ」。それ以上濃くなると「タレ」というべきかなと思いました。

 

しかし、ここでひとつ微妙なものを思い出しました。

冷やし中華のタレは、だいたいめんつゆと同じくらいの塩分濃度で、さらっとしていますが、「つゆ」とはいわないですよね。

また、ポン酢も、なにか混ぜ物をして「ポン酢だれ」にしない限りは、ストレートの状態では「ポン酢はポン酢」であって、あまり「タレ」とか「つゆ」とか言わないですよね。

また、つけ麺のつけ汁は塩分濃度はめんつゆレベルですが、「つけダレ」もしくは「つけ汁」と言い、「つけつゆ」とは言わないですね。

タレとつゆの明確なラインはどこにあるのか、また分からなくなって来てしまいました。

 

そこで、英語で考えてみることにしました。タレはSauceでつゆはSoupです。そばつゆは「Soba Sauce」でした。なるほど、英語は簡単です。つまり、何かに味をつける液体はソースと呼び、液体そのものを飲み干すものはスープと呼ぶわけです。そう考えると、そばつゆは、英語脳からすれば、「そばダレ」と呼ぶべきものだったかもしれません。でも、いまさら、「そばダレ」なんて言っても、なんかコッテリしてそうだし、風流じゃないですよね。和食じゃないみたいだし。。。

はっ!そうか!つゆと呼ばれるかどうかは「和食」らしいかどうかなんじゃないだろうか。「風流」かどうか、によるのかもしれない!!!そう思い始めました。

つゆは漢字だと「露」ですものね。この字をあてる時点で、もうすごく「風流」だ。

「露」って、空気中に含まれている水蒸気が朝晩の気温の変化で葉っぱなどについた水滴のことですからね。

そういった自然の中から自然に生まれた液体を「つゆ」って呼ぶことになったということか。まさに、純和食の出汁の取り方に通じるところがある。西洋のスープはグラグラ煮出して出汁をとりますが、日本のスープは決して沸騰させず、そこにあったものをすっと引き出すという、具材にも負担をかけない抽出の仕方をします。

そういうことか。

 

なにか分かってきた気がします。

 

もしかすると「つゆ」「タレ」という二極的な比較でないのかもしれない。

「つゆ」「汁」「スープ」「タレ」といった表現で、微妙に感じられる味わいが異なるのではないだろうか。

●つゆそば

●汁そば

●スープそば

●タレそば

こう書くと、タレ以外はどれもきっと飲み干せる塩分濃度だろうけれど、微妙に伝わってくるニュアンスがちがう。

つゆそばは出汁がおいしそうな気がするし、汁そばはあっさりしてそうだし、スープそばはクリーミーななにかを想像してしまう。

英語で言えば、全部Soup Noodleで片付けられてしまうものなのに、ちょっとした汁の方向性でこれほど味のニュアンスが異なってくるというのは日本語の奥深さならでは。

 

つまり、「つゆ」と呼ばれるものは、飲み干せる程度の塩分濃度であり、かつ、グラグラ煮立たせずに抽出した出汁をベースにしたさらりとした洗練された液体を「つゆ」と呼び、何かを味つけるための塩分の濃い液体は「タレ」と呼ぶ。ただし、つゆと同じような塩分の液体でも、料理の洗練度や方向性によって「つゆ」とは呼ばない。だから、冷やし中華のようなもともとあった和食でないような液体は「つゆ」とは呼ばれないのである。

ということかもしれない。

 

ところで、味噌汁は、味噌つゆって呼ばないのは、やっぱり味噌ってちょっと野暮ったいからかな。

でも、会話のなかでは、「今日の味噌汁は出汁が美味しいから、おつゆまで残さず飲んでね」とか言うし、そもそも、味噌汁のことを「おつゆ」と呼ぶ人もいるし、「つゆ」という言葉には汁に対する敬愛が含まれているんじゃないかと、思ったわけです。

 

結論になったのかしら。

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