だしと発酵、暮らしとデザイン

丁寧で本物の日本の次世代の食生活を提案する、ライフスタイルWEBマガジン

コネタ だしについて 丁寧に暮らす

出汁無しおでん

投稿日:

以前、豚汁は出汁を使わないで作ったほうが実は美味しくできるという記事を書きましたが、同じく、おでんも具材から出る旨味だけで美味しくできるということだそうですので、これはやってみないといけないと思い、冬まで待てず今日作ってみましたので、記事にします。

 

「おでんに出汁が要らない」

 

この衝撃的な事実は、しばらく私の中でうまく咀嚼できずにいました。しかし、敬愛する野崎シェフのYoutubeの動画を見ると、やはりおでんに出汁は要らないということ、うーん。これは、やってみなくてはいけません。

そもそも「出汁」とは、だしソムリエ協会によりますと「独立して取れるもの」と「自然に取れるもの」の2種類がありまして、鰹節なんかは独立して取れるものの代表格で、出汁をとるために食材を煮出してスープをとります。一方、自然に取れるものとは、料理の中で、各食材から自然に出てくる抽出成分で、出汁はもちろん、食材もそのまま食べる目的で調理されます。

今回、この「出汁無しおでん」というのは、要するに鰹節などの「独立して取れるもの」を使わずに、素材だけを使って作るということなんだと思いました。

不安はありますが、百聞は一見に如かず、やってみましょう!!

 

用意したものは、スーパーでよくある練り物詰め合わせ。

ここに大根や卵など、お好みものものを自分で加えていきます。

添付されていたつゆの素は捨てます。とりゃ!

次に昆布です。昆布は、「独立して取れる出汁」なんじゃないの???と思いましたが、あくまで出汁ではなく、おでんの具のひとつということにしますと、今回は、いつも使っている真昆布や利尻、羅臼、ではなく、食用昆布の代名詞の日高昆布を使いました。

 

ということで、昆布を戻し始めます。(えーと、なんか出汁取ってるようにしか思えませんが、、、まあいいか)

次に、沸騰前に昆布を取り出して、根菜類をゆでていきます。

根菜に火が通ったら、おでん種を入れて、ここからは80度をキープします。(って野崎さんのやり方には書いてあったので)

いつもなら、ここに入っているスープは鰹の一番出汁なのですが、

大丈夫かな。。。

味付けは、薄口醤油だけ。せめて醤油は良いものをということで、ちょっとこだわりの醤油。

味を見ながら、醤油を足していって、いいかんじ!と思ったところで塩分を計測。

おお!0.78%!美味しいとされる0.9%より低い数値を弾き出しました!

これは、つまり、旨味成分が存分に作用されているので、塩分がそれほど多くなくても美味しく感じられるという証拠!

これは期待できるかも!!!

 

80度で約1時間ほど経った頃に、夕食の時間となりました。

さあ、お味はどうでしょう。

 

いただきまーす。

 

見た目は、どこからどう見てもおでんです。

冬なら熱燗が欲しくなるビジュアル。

 

ズズズーズー。

 

 

 

ほほう。なるほどー。そういうことかー。

なるほどねえ。。。

 

えー。これはですね、現代人の化学調味料及びそれに付随する酵母エキスやたん白加水分解物の強烈な旨味に慣れてしまっている人への挑戦状のように思いました。どういうことかと言いますと、このおでんは、結論としては美味しいはずなのですが、添加物まみれの現代人には物足りないおでんなのです。つまり、このおでんで満足できるかどうかが、受け手側の舌がけがれてないかどうかが試されるおでんだと思いました。

私は、平日は外食も多いし、コンビニで済ませることも多いので、濃い味に慣れきってしまっています。だから今回、正直このおでんはちょっと物足りない感じがしました。しかし、同時に、鰹節などの旨味の増幅作用がない分、それぞれの食材の味わいや風味をより感じられました。練り物を食べれば練り物固有の味が感じられましたし、大根を食べれば大根の味がしました。これはなんというか、非常にプリミティブな食体験と言いますか、ピュアな感じがしました。

 

このおでんは、美味しいかと問われれば、美味しいです。

同時に、物足りないかと言われれば、物足りないです。

 

でも、なぜ物足りないかと感じるかというと、おそらく、日常的に化学調味料及びそれに付随する旨味成分を過度に取りすぎている現代人の舌が麻痺してしまって、繊細な旨味が分からなくなっているということなのだろうと思います。

 

興味深かったのは、小さい子供たちは、「美味しい美味しい!」と言って、スープをごくごく飲んでたこと。私や妻は、なんだか薄いねという感想でそこまで進まなこと。

つまり、まだ化学的な旨味に毒されていないピュアな子供たちは美味しいと感じ、毒されまくっている中年夫婦は物足りないと感じたということなのだと推測されます。今回はいろいろと考えさせられる場面をいただきました。

出汁無しでも充分に成立するおでん。

しかし、一方で、より強い旨味を求めてしまう現代人。

そんな今の世相を感じられたおでんでした。

 

いつか醤油だけで味付けされたおでんを心の底から美味しいと思える人や社会を増やしていけるといいなと思った日でした。

 

-コネタ, だしについて, 丁寧に暮らす

執筆者:

関連記事

【検証】水の硬度による出汁の出方の違い 〜こんぶ〜

今回は、水の硬度の違いによって、おなじ素材で出汁の出方がどう変わるかの実験をしてみたいと思います。 用意したのは、4種類のお水。 硬度の低い順に ●鹿児島の温泉水 ●南アルプスの天然水 ●エビアン ● …

【検証】水の硬度による出汁の出方の違い 〜かつお節〜

前回、軟水から硬水まで4種類の水を使って、昆布の出汁の出方を検証しました。 今回は、その昆布出汁を使って、かつお節を加えて合わせ出汁にして、どのように味わいに違いが出るのかをレポートします。 今回も、 …

醤油を見極める

今日は、渋谷のヒカリエで行われていた「良い食品博覧会」の食の語り部のチョーコー醤油さんの講座に参加してきました。 醤油の原料である大豆に関してのお話をメインに興味深い話を聞きました! 醤油の原料といえ …

出汁を引こう! 〜かつお荒節薄削り〜

以前の記事で、築地の鰹節屋さんは、荒節の鰹節を一般人には姿のままで売ってくれないと嘆いたことがありました。 その後、読者の方から連絡をいただき、ネット販売など入手できるところを教えてくれたりしたのです …

重ね煮から見るダイバーシティ&インクルージョン

ダイバーシティ&インクルージョンという考え方が日本でもある程度浸透してきた今日この頃ですが、最近習い始めた重ね煮という調理法とそこから生まれる料理に関して、この価値感がリンクする思いがしました …

だしと発酵、暮らしに関するヒントをデザインの視点を交えてお届けします。

2020年12月
« 11月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031