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【コラム】そこにお金を払うことは、将来自分たちがうまいものを食べるためでもある

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今日は、ふたたび、かつお節のタイコウさんのお話。

 

ホンモノとニセモノ、あるいは、ホンモノらしく見えるニセモノ。

一般消費者にはよくわかりませんね。

もともと消費者は「損」をしたくありません。

美味しいものを1円でも安く買えることが「得」と考えてしまいます。

しかし、本当の意味での「損」「得」とはどういうことなのか、タイコウさんと話していると考えさせられます。

 

ここかつお節のタイコウさんは、鹿児島県枕崎の宮下さんという方が作るかつお節だけを仕入れています。

それを値切ることなく出来の良し悪しに関わらずに全部買い取ります。そして、タイコウさん側で仕分けて、それぞれのニーズにあわせて味のわかる料理人に売っていきます。

よって、タイコウさんで売っているかつお節は他のそれに比べると、それなりに値が張ります。時には出来の悪いものも混じっているかもしれません。あるいは、その分も消費者は払っていることになるのかもしれません。

しかし、この商売のスタイル。実は、資源、生産者、美味しさ、全てに関して、将来にわたって美味しいかつお節を手に入れるために、実に有益なことをしているように思います。

 

どういうことかと言いますと、どの世界でも、生産者というのは意外と立場が低いもので、安く買い叩かれてしまうことが多いです。せっかく苦労して作っても、あまり儲からないんです。これはまあ、私のいるデザインの世界でも似たようなことはあるのですが、末端の職人であればあるほど、安く買い叩かれてしまうことが多いのが世の常です。士農工商の時代からそうだったのでしょう。

そうすると、なにが起こるかといいますと、まず仕事が続けられなくなる、あるいは、手を抜くようになる、あるいは、モチベーションが下がる、ということが起こってきます。

そうなると、悪循環がはじまり、儲からないから、良いものが出来ない、良いものができないから安くなる。という風になりどんどんダメになっていきます。

やがて、その業界に入りたいという若者もいなくなります。

かつお節業界でいえば、近海一本釣りのかつお節作りなんて、大手メーカーが作る遠洋の巻き網漁のかつお節に比べたら、手間もひまもかかりすぎて、非常に大変な商売です。そうなると、本来美味しい最高のかつお節が作られなくなってしまいます。

安く買いたい消費者が多く居る以上、大手メーカーはますます安いかつお節を作ります。そうなると、ますますカツオを乱獲します。気がつくと、カツオが海から居なくなってしまいます。

このような目先の「得」を取ると、長い目でみたときに、もしかしたら、いま当たり前に安くいただいている「かつお出汁」が当たり前ではなくなってしまうかもしれません。

ましてや、本当に美味しい手作りの近海一本釣りのかつお節は、

幻の一品になってしまうかもしれません。

 

それを将来幻にしないために、我々一般消費者が出来ることがあります。

それは、正しくまっとうな商品に付けられた値段を受け入れること。

そして買うことです。

そうすることで、生産者も幸せになり、そこに価値が世の中に認められれば、

それを守ろうという動きも出てきます。

僕は、よくわからない慈善団体に募金をするより、応援したい分野にお金を落とす方がよっぽど良いと思っています。

これは、かつお節に限ったことではありませんが。

いま世の中あらゆるモノコトが指一本で手軽に買えたりしてしまう時代。

しかし、その便利の裏側には必ず影があります。

毎年土用の丑の日になると、同じような類の話をうなぎの話でも聞きますよね。

しかし、それが分かっていても、牛丼屋で1000円でおつりが来るうな丼があると、食べてしまうのも人間の弱さです。もう将来食べられなくなるかもしれないから「残そう」ではなく「いまのうちに食べておこう」と思ってしまうのも人間の弱さです。

 

このあたりの何にお金を払うかという価値感。

すこしでも意識改革をしていければいいなと思うのですが、

人間の一番弱い部分との戦いでもあり、難しい問題だよなと思うのです。

でも、知らないより知ること。

時にはそういうものにもお金を使うこと、ということが大事なんだと思います。

まあ、自分の生活が破産してしまっては元も子もないのですがね。

 

良い生産者と良い目利きがまだいるうちに、

良い消費者が増えるように願っています。せめて自分はそうありたい。

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