さあ、久しぶりのコーナー。出汁を引こうです。今日は、煮干し出汁です。
煮干しは、素材や煮出し方で結構出汁の雰囲気が変わる出汁でもあります。今日は、洗練系の出汁を引きます。
じっくり前の晩から水で戻す
今日は、白口の大羽を使います。(用語は前の記事を参照ください)
素材は、愛媛産です。今の時期は、香川の伊吹島よりも愛媛の方が良いという築地のおっちゃんのおすすめでした。
煮干し出汁は、やっぱり昆布と合わせるのがいい感じですので、前の晩から無印良品の麦茶ボトルを使って昆布とともに水出ししました。
煮干しは、内臓からエグみが出ますので、本気の洗練系出汁を目指すなら、水に浸ける前に、頭を取って、背中から爪を入れて二つに割って、内臓を取る、という処理をすると最高級に洗練の煮干し出汁になりますが、今日は味噌汁に使いたいと思っていましたので、多少の雑味は旨みということで、処理をせずに水に浸しました。(青口の場合は内臓は出したほうがいいかもしれません)
【レシピ】
水:1リットル
煮干し:20〜30グラム
昆布:10グラム
冷蔵庫で一晩、水出しします。
実はこれだけで、もういい感じに出汁は出ていますが、ここからじんわり煮出すことで、コクが増します。
鍋に移して、弱火で火を入れていきます。
じっくり火を入れていき、60度になったところで、温度をしばらく保ち、昆布を引き出します。(昆布は、捨てずに食べましょう)
そして、火を入れていき、80度になったら、ここでまた温度をキープして5分くらい煮出します。
煮干し出汁の出し方で、弱火の沸騰で煮出すというレシピの方もいらっしゃいますが、80度を超えると脂質の酸化で生じた揮発性カルボニル化合物や煮干しの生臭さの元となるアンモニア、ジメチルアミンなどの物質が生じるので、魚くさくなってしまいます。(それが煮干しらしくていい!という方もいますので、ガッツリ煮干しが良いという方は、グラグラ煮出してください)
味見をして、良い感じに出汁が出ていれば、キッチンペーパーや、さらしでこします。
洗練系の出し方をしますと、アクが出る間もなく、透き通った黄金の出汁が取り出せます。
煮干しは、3%の食塩水で煮出して作るため、出汁にはすでに程よい塩味が付いています。ですから、煮干し出汁で味噌汁を作る時は、いつもと同じ量の味噌を入れると、ちょっとしょっぱくなってしまいますので、煮干し出汁の時は、味噌をいつもより少なく入れて味を見ながら調整していくと良いと思います。
なお、「究極洗練系」の煮干し出汁を引く時は、頭と内臓を取った上で、上記手順に則って出汁を引くと、雑味のない洗練系の出汁が引けます。(なんなら煮出さないで水出しだけでも終了と成ります)
僕は、ちょっと雑味があったほうが好きなので、そこまでしませんが、極めるなら、それも一択です。
同じ素材でも、出し方を変えるだけで、いろいろと出し分けることができるのも、出汁の奥深さだと思います。
出汁は、煮干しに限らず、コーヒーやシガーに近いような深い文化があるような気がするのですが、なかなかまだその価値観が共有されていないのか、まだまだ一部の人の世界、あるいは和食の頂点の人たちの会話で終わっている現状ではあるのかなとは思います。
もっともっと広げていきたいなあ。