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糀20割の減塩みそ、それがどうした。

投稿日:2018年5月9日 更新日:

なんか健康に良さそうな言葉が踊ってますね

はい、今日のテーマは糀20割味噌についてです。

最近の麹ブームもあってか、味噌のパッケージに糀の割合を記載してある味噌が増えましたね。このタニタ食堂の味噌を筆頭になんか健康に良さそうなイメージでよく目にします。

しかし、本当に健康に良い味噌なのでしょうか。今日は、タニタ食堂のこの味噌に喧嘩を売ってみようと思います。(ドキドキ)

そもそも糀20割味噌は新しくもなんともない

あらためて、味噌の作り方から言いますと、一般的な味噌は米麹と大豆を1:1の割合で作ります。

20割糀は米麹と大豆を2:1の割合で作ります。(味噌業界の人は20歩と言います。歩は歩合のことです。)

糀が多いとどうなるかといいますと、発酵が早く進むので、3ヶ月くらいの熟成で味噌がまだ白いうちに味噌として完成します。いわゆる白味噌とよばれる味噌です。米麹の割合が多いため、味は甘みがおおく、優しい口当たりになり、女性や子供に好まれる傾向にあります。

この糀の割合の多い味噌は昔からありまして、短い期間で味噌が出来上がるということで待つのが嫌いな気の短い江戸の人に好まれたということです。(というか、大量にどんどん作らないと供給が間に合わなかったというのがホントのところ)

味噌業界というのはあまり横の繋がりが無い業界のようで、それぞれの味噌蔵で独自の配分量で作っていますから、レシピは門外不出。あえて麹の配分量なんてパッケージに表記していませんでした。

しかし、ここ最近の麹ブームに乗ってか、糀が20割と書けば、健康っぽい感じがするので、売れるのでは!?と考えた大企業が仕掛けた商品戦略と思われます。でもね、味噌によっちゃ、30割の味噌だってありますから。別に威張れる分量じゃありません。

大事なのは、いかに良い糀を使うかで、糀そのものの品質が高いほうが大事です。糀の量が増えれば増えるほど、糀の個性が味噌の味に直結しますから。そのあたり、この味噌はどうなんでしょう。

(さっきから、「麹」と「糀」が入り交じってますが、麹は米、麦、大豆などからつくるもので、糀は米からつくるものだけを指します。だから米糀と書くと、頭痛が痛いみたいなことになっちゃいます。これマメね。)

白味噌が減塩なのは当たり前

手前味噌作りをしている人は良くご存知かもしれませんが、米麹を多めにして味噌を作るときは、塩の量を減らします。(まあ塩が多くても味噌は出来るんでしょうが)白味噌本来の甘さや味わいを引き立てるには、減塩したほうがより白味噌の味わいが引き立ちます。

ですので、「減塩みそ」と大きく書いてあるのは、さも、企業努力で減塩しました感がありますが、当たり前のことが書いてあるだけです。

(もちろん、事実を書いているだけですが何か、といわれればそうですが、この減塩の文字の大きさからして、どうも作為を感じます。)

減塩味噌で作った味噌汁が減塩とは限らない

次に、減塩味噌がほんとうに実際の食事の減塩につながるかどうかという問題です。

そもそも、人間が美味しいと感じる塩分濃度というのは0.8〜0.9%の食塩濃度です。(人間の血液の塩分濃度がこの濃度なんです)

ですので、減塩味噌を使って味噌汁を作った場合にしろ、味をみながら味噌を入れていきますので

おいしいと感じる量まで入れると、結局、使う味噌の量が増えただけで、全く減塩にはなりません。

味噌汁を減塩にしたいのなら、出汁をちゃんと効かせたほうが確実に減塩につながります。

出汁が効いているほど、塩分が少なくても美味しく感じるからです。

味噌の種類の選択は味噌汁の減塩とは無関係といえます。

無添加だから良いとは限らない

最後に、「無添加」という記載がありますが、味噌は無添加だから良いとは限りません。(なんと!)

味噌の健康成分は、麹そのものというよりも、麹が作り出す「酵素」が大事で、それが生きているかどうかが一番大事です。酵素は熱に弱いので、熱処理された味噌は酵素が死んでいます。(「だし入り味噌」なんかは確実に熱処理されているので、酵素はゼロです。)そこで、酵素を殺さないで味噌の品質を保つために、アルコールを添加することがあります。アルコールを添加すると無添加とは言えなくなってしまうのですが、酵素は死にません。ですので、添加物が入っていても、健康成分が入っている味噌はあるのです。

もちろん無添加で酵素が生きた味噌も売られていますが、その場合はパッケージに「生」と書かれています。

このタニタさんの場合「生タイプ」と書かれているので、若干怪しく感じます。本当に生なら「生」とだけ書けばよいのではと勘ぐってしまいます。

いちばん簡単な見分け方としては、みそのパッケージに穴が開いているかどうか、これがあれば、この味噌が生の酵素が生きた味噌だということが分かります。酵素が生きていると、買った後にも発酵が進みガスが発生して穴が無いと破裂しちゃうんです。

と、ここまでケチョケチョに言ってしまいましたが、タニタさんにも穴は空いていましたので、酵素の生存問題はセーフなのかな??

しかし「生」ではなく「生タイプ」という表現がどうも気になります。商品のホームページにも何も書いてありません。うーん。限りなくグレーに近い白と言ったところか。もしもこの記事を読んだマルコメの担当者がいらっしゃったら、今度パッケージのリニューアルをするときがあれば、やましいところがなければ堂々と「生」と書くようにして欲しいものです。

消費者として正しい目線を持ちたい

企業というのは、売り上げをあげてなんぼですし、儲けることが一番大事です。ですから、そのときどきのブームにのっかってさまざまな表現を事実とずれない範囲で消費者に勝手に良いイメージをもってもらうように仕向けるプロです。今回はタニタ食堂の減塩みそをやり玉にあげてしまいましたが、もちろんこのパッケージに、この味噌は健康に良いとは一言も書いてありません。事実しか書いてありません。タニタ食堂は何も悪いことはしていません。しかし、人は書かれたうたい文句から勝手にイメージを補完して自分の中に良いものとして描いてしまいます。そこが問題です。多くのトクホ飲料もそうですす。

どうか、このサイトをご覧の方は、正しい知識で世の中にあふれるさまざまな謳い文句に踊らされない目線を持っていただければと思いました。

(なんか、以前流行った「買ってはいけない」シリーズの本みたいな感じになっちゃいました。)

しかし、都会に住んでいると、味噌蔵からちゃんとした味噌を取り寄せて、なんてなかなか出来ないからどうしたもんかなと思っていたら、いつも仲良くしていただいているスタイリストであり発酵友達であるYさんから教えてもらった五反田にある坂本商店さんを教えていただきました。ここに行けば、生きている味噌を手軽に買えそうですので、是非! ネットショップもあるみたい。

p.s.

実は、うちの奥さんはこのタニタ食堂の味噌が気に入っているようなので、我が家にはなんだかんだ冷蔵庫に入っています・・・

まあ、味が好きならそれはそれで別に健康に良くも無いけど悪くもないからいっか、という感じです。

むしろ、冷蔵庫に麦味噌、八丁味噌、仙台味噌、信州味噌、Yさんからいただいた手前味噌をストックして場所を占拠している私が怒られています。家庭なんてそんなもんですね。笑

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