ある目的だけのために存在する形
さて、注水式重石バリストンと聞いて、どんなものかすぐに思いつく人はどれくらい居るだろうか。筆者も、もちろん知らなかった。
しかし、下記の写真の黄色いタンクを見れば使用用途は一目瞭然ですね。
はい、今日は、この注水式重石バリストンをテーマにデザインを語ります。
装飾のいっさい要らない必要充分な形
おそらくこのプロダクトに関して、オシャレ感や余計な要素は要らないでしょう。ここにデザイナーが関ったのかさえ疑問です。
しかし、いかにミニマムに削ぎ落とし、目的を達成するかを追求することがデザインの役割の一つだとするならば、これも語られるべきデザインといえるのかもしれません。
まずはこのプロダクトに考えられる要件をまとめてみましょう。
目的
- 工事現場などで使われるA型バリケードにマッチング
- 風で倒れないようにするための重石
- 恒久的な設置使用ではなく、工事現場などで使われるため、持ち運びに便利
- 使わない時、移動する時は軽く
- 屋外での過酷な使用に耐える
おそらく、こんな感じかと思います。
A型バリケードに関しては、調べたところ、いくつかの会社が生産しているようですが、だいたいサイズは同じくらいでした。でも、規格が厳密に決められているわけではなさそうですので、微細なサイズ差はありました。
バリストンに関しては、株式会社ミツギロンという会社1社が作っているようで、バリストンはこの商品名のようでした。
商品名から推測するに、バリストンは、バリケードのストーンから来たものかなと思います。
さて、ここから、デザインに関してです。
下が汚れて見にくいですが、
右側の下部はポールにしっかり食い込むように下に向かってコの字形をしています。これによって、ズレを防止しています。
左側の下部は、下部は平らです。おそらく平らであることで、多少サイズが異なるA型バリケードがあっても対応可能になりそうです。また開き方が不十分であったりしても問題なさそうです。
真ん中の下部は平らです。そして、上部も不要な出っ張りはありません。これによって、収納時には、スタッキングしておくことが出来そうです。
持ち運びの取っ手はセンターに持ちやすそうな大きさ感でありますので、水が入った後に移動する必要が出ても、片手でも安定して持ち運び出来そうです。
カラーは黄色。工事現場の黄色と黒のカラーにマッチングするようにしているもとの思われます。A型バリケードと微細に色相が違うのはご愛嬌かな。
素材は灯油タンクと同じ丈夫なポリエチレン製。耐久性にも問題ありません。
このように見ていくと、必要充分にして必要最低限の要素で成り立っていることがわかります。
このプロダクトが無かった頃は、おそらく土嚢などを重石にしていたかと思いますが、やはり移動には不便ですから搬入搬出の際の力仕事が減って楽になった人が多いのではないでしょうか。
ちなみに、グリーンもありました。
これは、工事現場でないのですが、A型看板のウエイトとしては、汎用性があるのかもしれませんね。
底が平らであるために、こういったこともできるのですね。(上記写真のみ、楽天の通販サイトから画像を流用しました。問題ありましたら、ご連絡ください。)
大きな看板には2つ使いも!なるほど。
こう考えると、小売店や商業施設での需要もニーズがありそうです。カラーバリエーションが増えるといいかもしれません。オフホワイトやグレイ、茶色などあると、商業用の看板のデザインを邪魔しないと思います。存在に気付くことないプロダクトであるほど、いかに存在を消しこんで環境に溶け込んでいくかというのも、重要です。
普段何気なく過ごしていると、目も行かないようなものでも、こうしてスポットを当てていくと、それぞれに個性や特長が見えてきて面白いですね。
デザインの役割は、単に飾りつけるだけではなく、目的に合わせて必要な形を与えるというのが真髄なのかもしれません。そして、その先に美があれば、最高です。