さて、4回目を迎えた、送水口のお話。
今日はその歴史をまとめてみたいと思います。(聞いた話なので、もっともっと詳しい方はいらっしゃると思いますので、ざっくりとしたアウトラインという感じかな。詳しく知りたくなったら博物館へgo!)
アメリカで生まれた送水口
もともとはアメリカで生まれた送水口。「SIAMESE CONNECTION」というのと「STAND PIPE」というのと
2つの呼び方があったそうで、どちらも同じもののようでした。
日本には昭和初期に入ってきたようなのですが、SIAMIESE CONNECTIONのほうが主流だったのかな?
当時はまだ消防法で現在のような設置の義務はなかったようなのですが、
どうやら、この装置をつけておくと、火災保険がすごく安くなるということでビルオーナーたちはこぞって付けたようです。
確かに、これがあるとないとでは、全焼か部分火災かくらいの違いはありそうですものね。
また、当時ビルオーナーがお金もってるアピールするものでもあったのか、現在とくらべてずっと良い金属が使われて重厚な作りをしていました。
しかし、当時輸入されたこの送水口、輸入品だったため、日本仕様にするために接続部を調整するための器具は必要で
それが商売になるということで、送水口の会社が日本にも作られたそうです。
やがて、日本でも送水口そのものが作られるようになりましたが、当時は完全なアメリカ模倣だったため
「SIAMESE CONNECTION」という言葉もそのまま模倣して作られていたんだそうです。
やがて、消防法が制定されるにあたり、昭和23年に、英語の表記ではイカンとなったのですが、
当時「送水口」というネーミングが思いつかなかったそうで、そのままカタカナ表記の「サイヤミーズコネクション」という記載になりました。だいたいそれが10年間続きました。
やがて、昭和30年代半ばに、ようやく「送水口」という文字が開発されて、晴れて現在の送水口という記載に成ったそうです。
「送水口」今見れば、誰が見てもすぐに思い浮かびそうな言葉ですが、「サイヤミーズコネクション」と言われたものを
「送水口」と日本語に意訳するのは、なかなか難しかったのかもしれませんね。
サイヤミーズコネクションってどんな意味?
では、このサイヤーミーズコネクション、どんな意味なのでしょうか。
サイヤミーズとは「シャム人の」という意味だそうです。(シャム人とは現在のタイ人です。)
博物館のパンフレットには「双頭恐竜」が語源と書かれていますが、
どうやら、本当のところはシャム双生児が由来ではないかとのことです。現在では差別用語というか、人権団体が黙っちゃいないというか、いろいろおおっぴらに言いにくい感じはありますので、館長もこの件については、なんとなく気まずそうな面持ちで濁していらっしゃいました。ですので、オフィシャルには「双頭恐竜」が語源と成ります。
(まあ、1900年あたりの帝国主義の時代なんて、パリ万博では、日本人だって「展示」されていたみたいですし、現代のような価値観とは全然違っていたのでしょうから、単純にいまの尺度を当てはめて、良いだの悪いだのいうのもナンセンスかとは思いますが、ただただそういう時代だったのだなと思います。いずれにしても、あんまり深く突っ込まないようにしましょう。)
昭和40年代から送水口は百花繚乱時代へ
さて、晴れて「送水口」というネーミングが定着した日本は、
折しも高度経済成長期、バンバン高層ビルが建設されるようになりましたから、
おのずと送水口もバンバン作られるようになりました。
需要があれば、おのずとそれを作るメーカーも増えるわけで、この時代は非常に多くの送水口メーカーがあったそうです。
デザインもいろいろなタイプのデザインが出てきたようで、おそらく送水口ファンの方々も、この辺りの送水口を見つけては、「これはどこそこのメーカーの何型のアレだ」とか、盛り上がっているのかなと思います。送水口が良いのは、消防車が近づきやすいところに設置がされているので、すなわち道行く我々にもすぐに見つけやすいというところですね。
私、「定礎」もちょっと好きなのですが、「定礎」は結構建物の中にあったりするので、意外と街歩きブラブラで見つけづらかったりして、送水口の方がコレクションしやすいというのが良いですね。そんなところからも、送水口ファンというのが結構いらっしゃるのかもしれませんね〜。
より画一化された現在の送水口
そして現在ですが、現在は以前のようにたくさんのメーカーさんはなく数社が作るのみだそうで、
この村上製作所も今は送水口に関しては保守メンテナンス業務となっているようです。
建設ラッシュもひと段落して、送水口を作る技術も上がってくると単価も下がってくるでしょうから、
いろいろと生き残っていくのは大変なのかもしれませんね。
しかし、現在の送水口は、なんというか、ツルっとして、プロダクトとしての「味わい」も少なく
本当に実用だけを考えたもののような感じがします。
やはり博物館で昔の送水口を見ると、しっかりとしたいい素材でちゃんと作られている感じがするので重厚で、権威を感じます。こう言ったものはこの先作られることはないのかなと思うとちょっと寂しく思うと同時にアンティークとして古き良き送水口を追い求めるファンの気持ちもわかるなあと思った次第です。
写真は博物館第一号となった、旧ブリヂストン本社ビルの送水口です。
当時どんな壁につけられていたかも分かるように壁までひとつひとつ再現するこだわりよう。すごいです。
こちらは送水口メーカーのロゴをあつめたもの
こちらは、送水口の「送」の文字だけ集めたもの。
ああ、これはもうデザイナーの目線ですよ、館長。楽しいです。
さて、次回は、送水口博物館に関してもうちょっと書こうかと思います。
お楽しみに〜