出汁を引こう!
いろいろな出汁を引く手順をご紹介するコーナー。
これを真似していただければ、みなさんも簡単に美味しい「だし」を引き出せますよ!
是非、真似してみてください。始めますね。
と、いきなり話が逸れますが、和食の世界だと、出汁って「引く」とか「取る」とか言います。「煮出す」とは言いません。
西洋料理や他の国の料理と違って、グラグラ何時間も煮出して無理矢理出汁を「絞り出す」ような暴力的な感じとは違って、
元々そこにあるものを、スッと引き出すみたいな感じが言葉にも表れていて、日本の美のようなものを感じて、いいなと思います。
個人的には出汁は「引く」という表現を使いたいと思っています。
さて、今日は、かつお節を使った一番だしをご紹介します。
一番があるってことは二番もあるのでしょうか。
はい、あります。
それぞれ味も用途も異なります。
少しづつご紹介していきますね。今日は一番出汁です。
カツオの風味と、食材の味を引き出す一番だし
一番だしは、書いて字のごとく、一番最初に引ける出汁です。
だいたい、80度〜85度で2分、かつお節の薄削りを湯の中で泳がせたものになります。
かつお節はできれば本枯れ節の削りたてが望ましいです。
多くは、昆布で旨みを出した湯で作る「合わせ出汁」にしますが、
目的によっては白湯からかつお節だけで引くこともあります。
昆布が加わることで、イノシン酸とグルタミン酸の相乗効果が生まれ、より旨みが強く感じられるようになるので
一般的には昆布を使うことが多いです。
今回は昆布を使う一番だしの手順をご紹介します。
準備
●水:1リットル(軟水が良いので、海外のミネラルウォーターは使わない)
●昆布:10グラム
●かつおの削りぶし:20グラム
●雪平鍋(普通の鍋でも良いが、出汁の色を見やすいので雪平がおすすめ)
●ザル
●さらし布(キッチンペーパーでもOK)
●ボウル
昆布は、真昆布か利尻昆布が良いです。(日高昆布でも良いですが、少し磯臭くなります。羅臼昆布は旨みが強すぎて、色も濃くなります)
かつお節は削りたての本枯れ節が一番美味しいですが、スーパーで売っている花かつおなどでも大丈夫です。(風味の違いで、旨み成分は変わりません)
今回は、一番上等な一番だしにしますので、道南真昆布と本枯れ節で行います。
実践
昆布はキッチンスケールで計ります。ハサミで切って、グラムを整えます。(1〜2グラムの誤差はご愛敬)
おすすめは築地の吹田商店の山出し昆布です。
1リットルの水を昆布に最低30分、できれば3時間浸します。麦茶を入れる容器がおすすめです。
鍋に移して、弱火でゆっくり温めます。
できれば、温度計を用意して、60度を1時間キープします。
温度計が無い場合は、鍋の内側に気泡が付き始めるのが60度なので、覚えておいてください。
途中で何度か味見をしましょう。
1時間経つと、まろやかで磯臭くない美味しい昆布だしが引けます。
(この出汁だけでも、最高の湯豆腐が楽しめます)
昆布の出番はここで終わりです。なんだか勿体無いようですが、取り出します。
(昆布は調理で3次利用までできるので、取っておきましょう。3次利用の方法はまた後日)
昆布を取り出したら、一端沸騰させ、火を止め、80度〜85度になるまで待ちます。
鍋の昆布だしが80度〜85度になるまでに1〜2分かかるので、その間にかつお節を削ります。
温度計で計りながら適温になるまで待ちます。時間が無いときは、沸騰後にコップ一杯の水をさせばすぐに適温になります。
いい温度になったら、一気にかつお節を投入。
2分静かに待ちます。
2分経つと、こんな感じに、鍋の底の方に沈着します。必要以上にかき混ぜたりする必要はありません。
時間がきたら、ボウルの上にザル、さらしを置いたところに流し込み、漉します。
さらしの上に乗ったかつお節は絞りません、雑味が出るので、重力で落ちていく出汁が落ちきったらおしまいです。
水滴が落ちなくなったら、そっとよけます。
先ほどの昆布と取り出したかつお節。これは、これで捨てるのは勿体無いので、二次利用三次利用します。(後日ご紹介)
透き通った黄金色のだしが引けます。
(脂分の多いかつお節や酸化が進んだかつお節だと、ちょっと濁ります。)
一番だしの完成です。
部屋中にいい香りが立ち込めて、幸せな出汁空間になります。
使い道
一番出汁は、ひとつまみ塩を入れるだけでも、立派なおすましになります。
湯がいた青菜をくぐらせれば、素材の味が引き立つお浸しになります。
茶碗蒸しや出汁巻き卵にすれば、ここは料亭か?と思える上品な料理が出来上がります。
白身魚や鶏肉などにもよく合います。
繊細で上質な出汁ですので、くれぐれも醤油を入れすぎないように。
出汁の旨みと風味を味わう料理に使いましょう。
きっと、素材の季節感を感じさせてくれる、最高の一品を演出してくれるでしょう。
ご家庭なら、カツオ節は、削り節をスーパーで買ってくるのでも充分です。
ちょっと面倒かもしれませんが、晴れの日には是非やってみてくださいね!