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発酵を考える

醤油はイスラム圏では売っちゃいけない?

投稿日:2018年5月11日 更新日:

今日のテーマは、醤油です。

いまや世界中で愛される醤油ですが、イスラム圏ではハラール認証された醤油しか売ってはいけないんです。なぜかといいますと、イスラム圏ではアルコールは宗教上の理由で禁忌となっているからです。

(ハラール認証:イスラムの戒律を守った食材であることを認証すること。この認証がないとイスラムでは売ることができない)

あれれ、醤油って、アルコール入ってるの??

はい、入っているんです。

表示にアルコールと書いてなくても入っている

醤油は、もともと醸造の段階で麹が大豆や小麦を糖化させたあとに酵母が働きアルコールが発生します。このアルコールがあるおかげで、醤油独特の香りが立ち、雑菌の繁殖も防ぎ、美味しい醤油ができあがります。醤油は出来上がったあと火入れ雑菌するので、ある程度アルコールは飛ぶらしいのですが、2〜3%はアルコールが残っていると言われています。

ですから、裏面の原材料表示にアルコールと書いていない醤油もアルコールが含まれているのです。アルコールと記載のある醤油もあります。これは、白カビを発生させないために、あるいは香りを立たせるためなどの理由で、さらに後からアルコールを添加したものになります。

醤油をぐびぐび飲む人はいませんし、お刺身だってちょんちょんとつけるだけですから、子供や下戸でも大丈夫だとは思います。醤油で酔った経験ある人いますか?でも、本当にアルコールが一滴も飲めないアレルギーがある人は煮沸させたりしないと使えない調味料なんです。(山口メンバーが完全に断酒するのであれば、醤油も気をつけないと行けませんよ。)

ですから、酔うためのアルコールでなくても、成分にアルコールが含まれているとNGとなってしまい、イスラム圏では取り扱ってくれないんです。しかし、イスラム教徒は全世界に16億人もいます。この人たちに醤油が売れないのはもったいない!ということで、各社頑張ってアルコールを含まないハラール認定醤油を作ることに成功し、販売できるようになりました。

醸造段階で発生するアルコールはハラールと認定される

日本ハラール協会によりますと、ハラールに厳しいとされるマレーシアのJAKIMという政府機関に働きかけて、「製造時に発生する自然発酵アルコール成分はナジャス(イスラム法において不浄なもの)でないとする。」ということが受理されました。なので、後からアルコールを添加した醤油はNGだけど、普通に作った醤油ならアルコールが少量入っていてもOKということだそうです。

なぜハラールと名付ける醤油が必要?

じゃあ、醤油はOKなんだから、いちいちハラールと言わなくてもいいのでは?とも思ったのですが、どうやら、イスラム教の中でも、もっともっと厳格な考え方グループや団体などその判断基準もかなり差があるそうなのです。お酒を入れたコップと普通のコップを一緒に洗ってはいけないとか、衛生面とはまったく関係ない信仰の部分での判断になりますので、どれくらい厳しく信じるかの個人差もあるでしょう。なので、おそらくハラール醤油と名付けた商品は、本当にアルコールを無くしているのだと思います。そのあたり、各社醤油メーカーのホームページを見ても書いていないので分かりませんが。

出典:https://www.kikkoman.co.jp/news/17049.html

UAEで日本製キッコーマンのハラール醤油が禁止に

そんな中、昨年、アラブ首長国連邦で日本製のキッコーマンのハラール醤油にアルコールが入っているということで使ってはいけないというニュースが流れました。政府の検査機関が調べたところ1.5〜2%のアルコールが検出されたとのことです。なるほど、やっぱり醸造段階ではアルコールは発生しちゃうんですね。それを除去するのってどうやるのでしょう。ちなみに、日本製以外のキッコーマン醤油はOKだったらしいので、日本と海外ではおなじキッコーマンでも作り方が違うのかな。

文化の違いを正しく理解し相手を尊重すること

ここ最近、ハラール認証はビジネスになるということで、日本では認証団体が乱立しているそうです。中には怪しいお金儲けだけを考えたような団体もあるようで、基準もまちまちだそうです。

だから、もし曖昧な基準で認証されたレストランにイスラムの人が訪れて、もしそこでその人にとってハラールと言えないことがされていたとしたら、信頼を傷つけ悪評が立つことになります。認証さえとれればOKと簡単に考えるのではなく、正しく理解しないとむしろ逆効果になるということです。ダイバーシティ(多様性)が叫ばれる昨今、本当の意味でダイバーシティが実現できるためには、相手を受容するだけでなく相手を理解し尊重する必要があるのではないでしょうか。

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