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だしについて 発酵を考える

生しいたけのポテンシャルを、最大に引き出そう

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あ〜、生しいたけの美味しさを最大限に引き出したい〜〜〜!!!

それも理屈を重ねていくことで、誰にでも美味しくできる方法を編み出した〜〜い!!!!

はい!今回も何を言っているのか、わからない人はこのウィンドウを閉じましょう。私はとある晴れた日、ふと椎茸とにらめっこしていて、ムクムクと感情が湧いてきました。「この子は、もっとできる子」だと。

ということで生しいたけのお話です。

 

生だって美味しくなれる! 

えー、しいたけは生のままだと、加熱して調理しても、グルタミン酸だけを持っていて、他の野菜やキノコと同じように、まあまあ美味しいヤツなんですが、乾燥しいたけになったとたんに、生にはないグアニル酸という成分が抽出されるようになり出汁としてうま味が増すというのは周知の事実なんですが、だからこそ乾しいたけがもてはやされるわけなのです。

それはそれで良いんです。乾しいたけサイコーなんです。

しかし、この乾しいたけは、スーパーの乾物コーナーなどでそれなりの値段もします。お正月やハレの日にちょっと美味しい出汁を引きたいというときの隠し技として使ったりするとかなり良い仕事をしてくれるのですが、普段の出番はなかなか少なめ目。日本産原木乾しいたけをすすめる私としては、もっともっと乾しいたけの魅力を伝えたいという気持ちはたくさんあるんです。

でもね、お財布のお金にも限りがある庶民としては、やっぱりスーパーで手頃に売っている生しいたけをもっとデイリーに美味しくできたら良いんじゃないかと思ったわけです。

そんなとき、私はしいたけの分解酵素のことになんだかやたら詳しくなっていたので、この理論を生しいたけに当てはめていくことで、うま味をアップすることができるんじゃないかと思ったのです。

百聞は一見に如かず、さっそくやってみましょう。

 

手順1. 冷凍させて、細胞膜を破壊する

まず、乾しいたけが出すうま味成分の「グアニル酸」ですが、

これはなぜ乾燥すると出てくるかというと、グアニル酸は、核酸という種類の成分で、普段は細胞の核の中に入っているんです。で、それは硬い細胞膜に覆われているので、加熱しても出てこないのですが、乾燥することで、その細胞膜が破壊されて水で戻した時に核酸が抽出されます。だから、生にはないうま味が出せるということなのです。

しかし、細胞膜を壊す方法は乾燥だけではありません。例えば強い塩分にさらすとか、酒に浸すとか、冷凍するとか、そういったことでも細胞膜は壊れます。

よくキノコは一度凍らすと美味しくなるというのはこういうわけです。

ということで、まずは生椎茸を適度な大きさにカットして、保存袋に入れて冷凍させることで、椎茸の細胞膜を壊してやりましょう。はい。

これで手順1は完了です。しかしこれだけでは、まだうま味の核酸が出てくる素地を作っただけなのです。次に行きます。

 

手順2. 戻したら強火で70度に上げる

一晩冷凍庫でカチカチに凍らせたしいたけをお鍋に水を張って戻します。戻す時間は程よくキノコが生に戻ればOK。

そこから一気に強火で70度まで火入れしていきます。

この「強火」「70度」というのが、めちゃくちゃ大事になります。

まず、解凍から戻ったしいたけの細胞膜から出てきている成分は実はまだグアニル酸ではありません。リボ核酸という物質が出てきている状態です。このリボ核酸をグアニル酸に変える必要があるのですが、しいたけは60〜75度の温度帯の時にリボ核酸分解酵素という酵素を活性化し、リボ核酸をグアニル酸に変えます。しかし、45〜60度の温度帯になると、ヌクレオチド分解酵素(ヌクレアーゼ)という別の酵素が働き出して、せっかく変わったグアニル酸をグアノシンという別の物質に変えてしまいます。このグアノシンはうま味成分ではなくなってしまうのです。

(すでにここで読むのを脱落する人が続出している気がしますが。。。続けます)

つまり、なるべくこの45〜60度の温度帯を早く抜ける必要があるため、強火で70度まで上げることが必要になるということです。

手順3. 70度で20分、その後沸騰させる

さあ70度の温度になったら、ここから20分ほどこの70度をキープしましょう。この温度をキープするのが火加減がめちゃくちゃ難しいのですがとにかく60度を下回らないようにそして80度を上回らないように気をつけることが大事です。リボ核酸をグアニル酸に変える酵素を働かせることが必要なのです。

そしてだいたい20分くらいキープしておけば、かなりの量のグアニル酸が生成されているはずです。

「あー、いまこの小さな鍋の中で、しいたけが自らの酵素によってうま味に変わっていっているのかあ」と思うと、ゾクゾクします。

ぜひ試しに一口テイスティングしてみていただきたいです。

おそらくいままで味わったことのない強いうま味を感じることでしょう。僕自身「あれ?これって乾しいたけの出汁と近い感じがする!!」って思いました。

しかし!ここで安心していてはいけません。先ほども申し上げたように45〜60度の温度帯になると、せっかくのグアニル酸が別のものに分解されてしまいます。このまま放っておくとうま味が台無しです。

そこで、そのままコンロの火を強めて、一度沸騰をさせ、全ての酵素を殺す(失活)させる必要があります。

これを行うことで、これ以上何かに変化することは無くなります

火入れって大事ね。

 

さあ、こうして完成した生しいたけの出汁がこちらです。

はっきりいって、めちゃくちゃ美味しいです。

(私はこのままリアルに半分くらい飲み干しました)

しかも、乾しいたけ特有の香りがしないので、あの匂いがちょっと苦手という人にも持ってこいです。

私はこの秋、東京の一般人の中で最もたくさんの乾しいたけを戻した男だと自負しています。しかし、それを否定するような生しいたけの魅力に気がついてしまいました。どうしよう。。。

 

 

まとめ

生しいたけのポテンシャルを最高に引き出すポイントをまとめます。

●冷凍する

●水で戻す

●強火で火入れ70度

●70度を20分キープ

●そのまま一度沸騰

ぜひ、騙されたと思って一度やってみていただきたいです。

 

はっきり言って超おすすめです!

なんなら試してガッテンにパクってもらいたいくらいに!!

 

え、分量のレシピ??

 

えーと。。。適当www。

私は1リットルに生椎茸中くらいのを8個くらい使いました。(スーパーの菌床栽培のやっすいやつです)薄かったら煮詰めればいいし、濃かったら薄めれば良いので、適当で良いですよ。気楽にどうぞ。

 

もちろんね、生しいたけの美味しさを出す方法としては、陽に当ててちょっと乾燥させるといった技もありますが、誰しもが日当たりの良いお家に住んでいるわけでもないですし、都会ではしいたけを干すなんてなかなかできません。この技ならば、だれにでも簡単に生しいたけのポテンシャルを最高潮に上げることができるのです。ちょっと冷凍して、ちょっと火加減を頑張るだけで、めちゃくちゃ美味しくなるんだから、やらない手はないっす。

 

そして、もちろん、だしガラのしいたけ自体も美味しくなっていますので、そのまま具材として様々な料理に活用できます!一石二鳥!

 

料理ってほぼ理屈でできると思うんです。

その上で、どう組み合わせていくかというセンスなんじゃないかなと思うんですよ。(異論は認める)

何より、しいたけが持つ「分解酵素」というのが「発酵」とニアリーイコールの考え方だったりするので、とてもワクワクします。

そう、キノコって森の分解者。

だからみんながなにげなく食べているキノコだって、いろんなものを土に帰すための途中過程のやつらだったりするんです。

以前しいたけ農家さんに、「しいたの本体ってどこだか知ってます?」って言われて、「え?このキノコじゃないの?」って言ったら、「ブブー。正解は木の中に繁殖している椎茸菌そのものが本体。その手に持っているキノコは、次の世代に胞子を飛ばすための出先機関」って言われて、度肝を抜いたこともあります。

キノコってすげえや。。。

そんなことを思うと、ちょっとキノコも可愛く思えてきませんか?(え、こない? あ、そうですか。。。)

 

p.s.

ネットで調べたら、しいたけ氷の論文を書いている人はいましたが、えのき氷のように煮詰めてミキサーしてから凍らせているので、私の技と手順が逆です。いまのところそれしか見当たらなかったので、たぶん私独自の技だと思われます。(違ったらごめん)

別に特許とったりしませんので、パクっていただいて構いません。でもパクる際にはご一報いただけると嬉しいです。


-だしについて, 発酵を考える

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