イメージだけじゃない!味に差が出る一本釣りのかつお節
かつお節を買う時に、それが一本釣りかどうか、気にして買う人はなかなか居ないとおもいます。だいたい、パッケージにそんなこと書いてあることがないですものね。
実はそれもそのはず、一本釣りのかつお節はわずか2%以下の流通量なので、そもそもほとんど出回ってないのです。
だから、一本釣りの商品ならば、一番目立つところに一本釣りだと書いてあるはずなので、見分けはすぐにつくでしょう。
しかし、この一本釣りかつお節、お値段も張りまして、なかなか普段使いするには躊躇する値段です。しかし、その香り、おいしさ、うまみを味わってしまうと、もうやみつきです。とっておきの日には使いたくなります。冷奴やおひたしさえも、立派なメイン級のおかずに早変わりします。
ではなぜ同じ海でとれたかつおが一本釣りとそうでないかで味に差が出るのでしょうか、今回お話していきます。
捕獲の際のかつおの苦しみの違いが味に影響
最近の漁業では、一度の漁でより多くの獲物を捕らえてたくさんお金を稼ぎたいということで、かつおに関しては巻き網漁が主流です。
この巻き網漁、海の中で大きく網で魚群を囲み、巻き上げて群れを一網打尽にします。
このとき、かつおたちは、いままで味わったことのない人口密度ならぬかつお密度の環境におかれ、大パニック状態になります。我先にどこかわかならい出口を探し、猛烈に動き回るのです。
そうしますと、かつお節のうまみ成分の元となるイノシン酸を作り出すATPという物質がたくさん消費されてしまいます。また、筋肉には運動による疲労物質の乳酸が溜まり、酸味が増してしまうのです。
一方、一本釣りでは、のんびり泳いでたかつおを竿一本で、ぽーんとつり上げ、暴れるまもなくあの世へいきますので、いろいろ成分が壊されることなくかつお節になっていけるのです。
巻き網漁は、うまみを損なう問題もさることながら、死にゆくかつおにとてつもない恐怖感を与えてしまうという倫理的な問題もありますし、群れを一網打尽にしてしまう、水産資源の枯渇につながる大きな問題にもつながっています。
そんな話を聞くと、多少高くても一本釣りがいいなと思ってしまいますし、第一おいしいし、選ばない理由はありません。あとはお財布と相談だけ。笑
しかし、近年の漁獲高の激減により、一本釣りかつお節がますます獲れなくなっているようで、獲れても、鮮度のいいものはどうしても刺身の方に流れていくことが多いので、かつお節生産者は苦労しているようです。値段が張るのは当たり前なのも納得です。でも、消費者の我々が買わないと、ますます一本釣りかつお節が衰退してしまいます。20年後も美味しいかつおだしを味わいたいですから、みなさんももしスーパーなどで見つけたら。積極的に買いましょう。
そして、もし、すっぱいかつお節に出会ってしまったら、残念に思わず「ああ、このかつおは、大変な苦しみを味わったんだな、ごめんね」と思って、ありがたく頂きましょう。
食事は、おいしいとありがとうが交差するあたたかい場所でありたいですね。