第四回目は、青森シャモロック節にスポットを当てます。実は最近鶏肉を使って鰹節のような節にする「鶏節」が密かなブームなのをご存知ですか? 魚臭さの無い出汁になるので(当たり前ですが)和食にとどまらず幅広い料理にもマッチするということで、全国各地でさまざまな鶏節が商品化されてきています。そんななか、地鶏の青森シャモロックを節にしてしまった方にインタビュー。なにやら味わう前から旨味が凝縮していそうですね。お伺いするのは、青森県で鶏節を作られている株式会社グローバルフィールド代表の保坂梨恵さんです。では始まり始まり!
青森シャモロック節、誕生ストーリー
編集部:保坂さん、はじめまして。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
保坂:はじめまして、どうぞよろしくお願いします。
編集部:まず、青森シャモロック節を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
保坂:うちの会社は青森シャモロックを養鶏している生産会社です。商品は9割が冷凍・冷蔵での流通であったため、常温で流通可能な商品を作りたいと思ったのがきっかけです。お肉を常温で流通するとなると・・・と考えた時に、頭に浮かんだのが出汁商品でした。八戸市にある静岡屋の社長さんに「青森シャモロックの常温商品、ダシ商品を作りたい」と話をしていたところ、社長のお母様(だしソムリエ)が「そういえば、鶏節ってあるのよね」と教えていただいたのがきっかけです。
編集部:なるほど、地元のつながりで新しいアイデアが産まれたということですね。節の製造も御社で行っているのですか?
保坂:いえ、そこは餅は餅屋ということで、埼玉で鶏節を作っている「轟屋」さんに静岡屋さんから繋いでいただき、製造を依頼しました。
編集部:轟屋さんというのは鶏節を作っている会社さんなのですか?
保坂:はい、すでに鶏節を自社商品として製造されていたのでノウハウが蓄積されていらっしゃいましたので、うちの青森シャモロックもお願いさせていただきました。
編集部:なるほど、試行錯誤しながらなんでも自分で作ってしまおうという生産者もいらっしゃいますが、既にスキルがある人がいたらやってもらおうというのは、ある意味合理的。プロデューサー的な立ち回りなんですね。いろいろリサーチなどもされたのですか?
保坂:地鶏の鶏節は市場に出回っているのは阿波尾鶏の鶏節だけでしたので、青森シャモロックの鶏節もいける!と思いました。また2019年2月に幕張メッセで行われました「スーパーマーケットトレードショー2019」では新発売予定商品として、実際にバイヤーの皆様にも見ていただき、商品の感想などをリサーチいたしました。
編集部:実は私、阿波尾鶏の鶏節食べたことあります。あれもおいしいですよね。地鶏の鶏節はまだ数少ないのですね。そうなると話題を集められそうですよね。
保坂:話題性はもちろんですが、なにより地鶏は凝縮された旨味が強いわけですから、それを節にすれば、とにかくおいしいということです。しかも、うちの商品は普通にお肉として売る質の良い肉をそのまま節にしています。一般的にだし原料に使われるものは、端材のような部分を使ってコストを抑えることもあるのですが、うちは正真正銘の正肉の美味しい部分を使っています。
編集部:それは確実に美味しいですね。実際に試作をした段階で、うまくいきましたか?
保坂:はい!出来上がったばかりの鶏節をそのまま試食していたら、1パックまるっと食べてしまいました。(笑)それくらい美味しくできてしまいました。食べた瞬間「これ、本当に味がついてないの?!」と驚きました。薫香もとても良く一発で味は完成しました。
編集部:なんと、素晴らしい。こういうインタビューでは苦労話の一つや二つ期待しちゃうんですが、すんなり行ったんですね。
保坂:もちろん苦労はたくさんしていますよ。私が代表になってから初めての商品開発だったのです。だから、価格設定やパッケージなど、多方面で大いに悩みました。
編集部:なるほど、一つの商品を世に出すというのはただ作って終わりじゃないですから、さまざまなご苦労があるのでしょうね。失礼いたしました。実際に商品となって反応はいかがでしたか?
保坂:青森県内では見たことが無い商品ということもあり、「これって何なの?」からスタートしました。実際に鶏節を試してもらうと、味の良さに感動してくださるお客様も多かったのが印象的でした。
編集部:なるほど、確かにまだあまり一般的には知られていないですからねえ。お味の特徴はどんな感じでしょうか?
保坂:何と言っても「ダシの良さ」にあります。噛むほどにあふれ出てくる青森シャモロックのダシは、一般的な鶏節にない強さがあると思います。さらに、お肉の色味がとてもきれいに出ているのもポイントです。他の鶏節に比べて色が濃く、見た目からも美味しさが伝わってきます。
編集部:なるほど、たしかに鶏節はもうちょっと白っぽいイメージがありましたがこの節はもうちょっと琥珀色していますね。綺麗です。どんなお料理に合いますでしょうか?
保坂:鶏肉なので、和洋中なんにでも合います。
編集部:たしかにそうでしょうね。私以前外国の方に鰹出汁を飲んでいただくことがあったのですが、日本人にとってはおいしいだしも、彼らにとっては「Fish」でしかなくて、生臭いといって渋い顔をされたことがありましたが、今後もっともっと外国の方が日本にいらしたときに、鶏節はお出汁のエントリーとしてとても向いているような気がするんです。
保坂:ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると、ますます販売をがんばりたくなりますね
編集部:お出汁以外にはどんな活用方法がありますか?
保坂:そのまま料理のトッピングとしてお使いいただくのをオススメしております。実際に温かいお蕎麦やお吸い物の具、豆腐やサラダのトッピングとしてもお使いいただけます。
お客様の中には普通の鶏肉のから揚げにまぶして揚げたという方も。(料理人の五十嵐美幸さんのレシピで鶏肉に鰹節をまぶして揚げると冷めてもサクサクというのがあるそうで、それを鶏節に置き換えたそうです。)
編集部:鳥の唐揚げ粉に鶏節をまぶす!? 斬新!! でもたしかにちょっとパリパリっとした鶏節の食感は唐揚げに合いそう。衣がやたらとおいしい唐揚げになりますね〜。(笑)
保坂:そうですね〜。まだまだいろんな商品になる可能性を秘めている節なんじゃないかと思っています。
編集部:夢溢れますね。商品はどこで買えますか?
保坂:現在は弊社直営の直売所およびネット通販、もしくは青森県内の物産施設【五戸町にある「ふれあい市ごのへ」様、六ケ所村にある「六旬館」様】にてお買い求めいただけます。首都圏では、赤坂にある「AoMoLink~赤坂~」様にて、3月よりお取り扱いが開始いたしました。さらに多くの方にお買い求めいただけるよう販路拡大にむけて頑張っています。
編集部:たしかに、このあいだ神楽坂のお店で商品を売っているのを見かけました!首都圏でももっと手軽に買えるようになるといいですね。
保坂:青森県の人はシャイなので、良いものがあってもアピールしない雰囲気があります。また、出しゃばると足を引っ張られることがあるので、そこが良くなると更に青森県が伸びるだろうなぁと思っています。
若い方は青森県を盛り上げていこうという方が多いので、これからの青森県にご期待ください♪
編集部:楽しみですね。リンゴと黒ニンニクだけじゃないんですね。
保坂:そうですよ〜。身近に自然がたくさんあり、食材も豊富、水も良いので美味しいお酒もあります。特に弊社がある五戸町は青森県内でも珍しい「肉の町」としても有名です。青森シャモロックの他に、倉石牛や馬肉もあるので、ぜひ五戸町にもお越しください。
編集部:わあ、良いですね。なんだかお腹がすいてきました。(笑) 保坂さんのこの先の目標ややりたいことを教えてください。
保坂:自社の通販サイトを通じて青森シャモロックと、青森県の様々な食材の魅力を発信しています。目指しているのは「青森県南の地域商社」、青森シャモロックとよく合う食材や食品、将来的にはお酒などの取り扱いもしていくつもりです。
編集部:地元ならではの強みを生かして、さらなる発展を目指していくということですね。いいですね! 保坂さんの座右の銘を教えてください
保坂:「現状維持では、後退するばかりである」(ウォルト・ディズニー)
編集部:まさにですね。ありがとうございました!
編集後記
今回は、幕張メッセの食のイベントに出店のために上京してきた保坂さんにお会いしました。ブースでは鶏節はもちろんのこと、シャモロックの胸肉の冷燻という新しい商品も発表されていました。毎年新しいものを作っていこうということで鶏節にとどまらず常に挑戦を続けていらっしゃるようでした。青森シャモロックは「味よし、出汁よし、歯応えよし」の三拍子が売り文句。出汁はシャモロックの味わいを手軽に知ってもらう入り口でしかありません。そもそも鶏ガラはラーメン店では引っ張りだこ。ここのガラは、あの世界で初めてミシュランを取った某ラーメン屋さんにも使われているくらいすごいところでした。今後の活躍にますます期待を感じる取材となりました。
昨今の新型コロナウイルスのために外出もままならない方がほとんどかもしれませんが、こんな時ほど自宅で美味しいご飯を作って食べることがせめてもの息抜きになるのではないでしょうか。そんなときの選択肢に是非加えてみてはいかがでしょうか。
※このインタビューは新型コロナウイルス拡大前の2020年始めに行われました。
Information
株式会社 グローバルフィールド
〒030-1512 青森県三戸郡五戸町字西ノ沢6-1
電話:0178-61-1511
FAX:0178-61-1512
公式サイト:
青森シャモロック節販売ページ: