だしと発酵、暮らしとデザイン

丁寧で本物の日本の次世代の食生活を提案する、ライフスタイルWEBマガジン

だしについて

だしは「引く?」「取る?」そろそろはっきりさせようじゃないか

投稿日:

今日は言葉遣いのお話し。

「だしを引く」「だしを取る」

あなたはどちらの言葉を使っていますか?

ふとそんなことを思った時に、意外とその使い分けは曖昧。明確な定義はおそらくないように思いました。そして、その言葉遣いをとても気にする人もいれば、全然気にしない人もいます。気にする人は言い方にとてもこだわりがあるようにも思います。

自分としては、「だしを引く」という言い方がとても好きなので、そちらの言葉をよく使うようにしているのですが、「だしを取る」という言うときも普通にあります。でも、なんとなくそれを使い分けるときに微妙なニュアンスの差があるような気がしています。なんでしょう、それは。自分なりに考えてみます。

「だしを引く」

というと、そこにあったものをスーっと引っ張ってくるような感じを受けます。ストレスなく自然に引き出され、溶け出して来るような状態を感じます。押し出すというよりも引き出す。足し算ではなく引き算。強引ではなく受動的。なんだかとても優しく、奥ゆかしい繊細な日本の価値観さえ感じるようなニュアンスを持っています。

「だしを取る」

こういうと、なんとなく調理人が能動的に自分から取りに行っている感じがします。素材に対して自然のままにというよりは、こちら側の強い意思を感じ、目的を達成するために、真正面から向き合って狙いに行っているような印象があります。

えー、なんとなく図解してみました。つまりこういうことです。

うま味がつまった素材があるとします。

だしを「引く」場合には、調理人は声かけくらいな感じです。

で、呼ばれたうま味君たちがスーっと出てきます。これが「引かれた状態」

一方、「だしを取る」場合には、素材のうま味君の都合は関係なく、無理やり調理人が取りにいっている感じです。

 

これをお鍋の状態で表すと、、、

「だしを引く」場合は、グラグラと煮立たせず、だしのうま味が自然に出てくる「いい温度」でストレスフリーに溶け出している状態。

「だしを取る」場合は、沸騰させて素材から無理やり煮出している状態。

 

とまあ、そんなふうに思うと、「引く」と「取る」の違いが出てくるのではないかと思うのです。

なんとなく「引く」方がいいでしょ?っていう流れにしてしまっていますが、もちろん煮出してうま味を抽出する方法もありますし、どちらが良い悪いでもないのかなあとは思います。ただ、どういう状態(気持ち)でだしを抽出したかで、「引く」と言ったり「取る」と言ったり、使い分けできるといいんじゃないかなと思ったのです。その使い分けのポイントは、やっぱり、「沸騰するかしないか」「能動的か受動的か」なんじゃないのかなあと思うのでした。

この定義には異論反論出てくる気もするので、そのあたりはみなさまからご意見をいただき。どういうことだと「引く」のか、どういうことだと「取る」のか。ということをもう少し突き詰めて整理していければ良いなと思ったりしています。あなかしこあなかしこ。

-だしについて

執筆者:

関連記事

かけ蕎麦を頼むと、主人にマークされる

かけ蕎麦は、蕎麦屋の出汁の実力がストレートに現れる かけ蕎麦というと、どうしても「一杯のかけ蕎麦」の物語を思い浮かべてしまって、なんだか、貧しい人、可哀想な人の食べ物、というイメージが強くて、なかなか …

【プロテアーゼ】マイタケ発酵焼きアゴ出汁

以前、マイタケのタンパク質分解酵素プロテアーゼの力を借りて、鰹節の厚削りで出汁をとることをレポート&おススメしました。 マイタケは、ある温度帯にすると、タンパク質を分解する酵素を非常に強く出すので、出 …

出汁を引こう 〜煮干し(やや洗練系)〜

さあ、久しぶりのコーナー。出汁を引こうです。今日は、煮干し出汁です。 煮干しは、素材や煮出し方で結構出汁の雰囲気が変わる出汁でもあります。今日は、洗練系の出汁を引きます。   じっくり前の晩 …

生まれと育ちで味も変わる、原木しいたけの面白さ

ここ最近、訳あって日本産・原木乾しいたけに毎日のように向き合っております。そんななか、ご縁があってしいたけの菌種、あるいは、どういった木で育ったかによって味わいが違うというお話をいただき、サンプルをお …

かつお節を巡るエトセトラ 3 〜どれ買ったらいいの?

お店にいくと、かつお節っていろんな商品があって、どれを買ったらいいのかよくわからない!! そこで、今日は、なにがどうなってるのか、パッケージから見るかつお節を解説します。 いろいろあっても2種類しかな …

だしと発酵、暮らしに関するヒントをデザインの視点を交えてお届けします。

2025年4月
« 1月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930