今日は、煮干しの活用のお話。
煮干しというと、お味噌汁の出汁に使うことを筆頭に、基本的に「出汁」としての役割のイメージが多いと思いますが、その視点に固執してしまうと、それ以上に広がりづらく、レパートリーも短調なものになりがちです。そこで、ちょっと発想を変えてみることで広がる煮干しの可能性をお伝えしたいと思います。
煮干しを「ベーコンのようなもの」と思ってみる
そもそも煮干しですが、その名のごとく、煮て干したものになるわけですが、これは煮ることでタンパク質を凝固して腐敗物質に変わる酵素を止め、乾燥することでその状態を長期間キープさせることに成功した食べ物です。つまり、うま味のタイムカプセル。そういう目で世の中見回してみますと、他にもたくさんありますよね。生ハムも、ベーコンも、アンチョビもいろんなものが製法はそれぞれ違えど、うま味を閉じ込めた保存食として存在しています。そして、それらって出汁をとるだけに使われていますか?いいえ、違いますよね。時に具材になったり、時に調味料になったり、いろいろと役割がありますよね。
つまり、何が言いたいかと言いますと、煮干しを「うま味の塊」として見ると、使い方がもっと広がるわけです。ということで、ちょっと強引ですが、いったん煮干しを「ベーコンのようなもの」と思ってみることにしましょう。
ベーコンとなると、みなさん普段どのように使いますか?油でソテーしてちょっとカリカリにして目玉焼きと一緒に食べても美味しいですし、スープに入れれば、そのまま出汁にも具にもなる。そんな存在ですよね?つまり、そういう使い方をお勧めしたいのです。ええー、煮干しだよ〜〜?って思う方にこそ、この発想を持っていただきたいのです。目から鱗になると思います。
ニボじゃがを作ろう
じゃがいもとベーコンってとても合いますよね?同じように、じゃがいもと煮干しもとても相性がいいんです。
あ、みなさん、いまからここに写っている煮干しは、「煮干し」ではなく「ベーコンのようなもの」と思って見ていってくださいね。ではいきますよ。
どこからどう見ても、煮干しではありますが、これは「ベーコンのようなもの」ですから、まずはオリーブオイルを入れましょう。
「ベーコンのようなもの」ですから、弱火でじっくりソテーしていきましょう。
シュワーっと言って「ベーコンのようなもの」はうま味をさらに凝縮させていくようです。
しばらくソテーしますと、オリーブオイルに「ベーコンのようなもの」から出たうま味が移ります。つまり、この油も美味しいということです。あまり火入れしすぎると焦げ臭くなってしまいますので、火加減は注意しながら丁寧にカリッとさせていきましょう。(カリカリベーコンを作るときも火加減を結構気にしますよね?同じ気分でやりましょう。だってこれは「ベーコンのようなもの」なのですから)
はい、もうOKです。これ以上やるとダメです。このギリギリを攻めるのが実にいいです。いまこの「ベーコンのようなもの」は、うま味が魚体にも油にも最高に行き渡っている状態です。これでベースは出来上がりました。外国人だったら、この油をパンにぬってそのまま食べるかもしれません。だって「ベーコンのようなもの」ですから。(しつこい)
さあ、ここからは簡単です。よく洗ったジャガイモを皮ごと投入して、弱火でお芋をグリルします。
全体に油が馴染んだら、ジャガイモが水面から顔を出すくらいまでお水をいれます。
料理酒をフィーリングで入れます。(無理に入れなくても可。だって「ベーコンのようなもの」がすでに良い仕事をしていますから)
みりんをフィーリングで入れます。コク深くなりますので、本みりんがおすすめです。ちょっと甘めにすると美味しいですが、ここから煮詰めていくので、いまの段階で甘すぎると煮詰まった後には激甘になっしまうので、味見しながら程よい感じにしましょう。(甘みが足りなかったら後で足せばいいですし。しかし、お料理があまり得意でない方には、この「程よい感じ」って言われるのがイラっとするらしいですね、申し訳ありません。いつかそのうちちゃんと分量をレシピにまとめますので。。。)
さて、落とし蓋をして、ジャガイモに竹串がスっと入るまで弱火でコトコト煮詰めていきます。落とし蓋は煮物には必須です。鍋に蓋をするのとは全然違います。火のまわりが落とし蓋のほうが圧倒的に良いです。そして、程よく水分も抜けます。
お醤油はまだ入れません。この段階から入れてしまうと、塩分で「ベーコンのようなもの」が硬くなり過ぎてしまいますので。
ジャガイモが炊き上がったら、落とし蓋は外して、お醤油をフィーリングで入れます。
あとは蓋をせずに、煮汁を蒸発させながら煮詰めていき、半分くらいまで煮詰まれば完成です。(また怒られるかもしれませんが、良い塩梅の塩味と甘味の味わいになったら完成です。ちょっと濃い目の味付けのほうがご飯のお供やお弁当のおかずになりやすいです。)
熱々よりも、冷めてからのほうが芯まで味が染み込んでおいしいです。
そしてそして、これが、とにかく美味い!超オススメです。よく考えたら包丁を一度も使っていません。お鍋ひとつだけです。
しかし、出来上がった料理は結局煮物なので、煮干しの出汁じゃないか、というツッコミ入ってしまうかもしれませんが、やっぱりちょっと違う。「ベーコンのようなもの」として思って作るのと、出汁の煮干しとして思って作るのでは、ちょっとマインドが違います。なにより、この煮干しも立派な具として美味しくいただけます。出汁ガラなんていうものではなく、むしろ煮干しだけを選んで無限に食べていたい。そんな存在になっています。
今回は醤油と酒、みりんの純和風バージョンでご紹介しましたが、トマトベースに塩コショウ、とろけるチーズにもあいます。煮干しは、実は油との相性がとても良いのです。だって、「ベーコンのようなもの」ですから。(しつこい)
ともあれ、こうやって考えると、煮干しのレパートリーはずっと広がると思いませんか? いままでベーコンを使っていた場面を煮干しに置き換えれば良いんですから。
もちろん、肉と魚の違い、製法の違いがありますから、まったく同じではありませんよ。合わせる食材との相性もあります。でも、アイデア次第で煮干しの活用はぐんと広がります。
ということで、今回は煮干しへの向き合い方の発想を変えるご紹介でした。
こんなレシピもおすすめだよ、というアイデアもあったらメールで教えてくださいね。このサイトでも紹介しますよ。