2020年2月は新型コロナウイルスのニュースで持ちきりでした。そして、いまも現在進行形で感染拡大が懸念されており、全国各地で物資があるにも関わららず買い占め、買い溜めが起こっているという状況に陥り、2011年の時を彷彿とさせるような混乱状態になっています。
「冷静に」と言われたところで、スーパーや薬局の棚から日用品が無くなっていく有り様を目の当たりにすると、人間の愚かさを感じつつも、やっぱり不安になってしまうのも人の心。集団心理でつい自分もとその行列にならんでしまうのも致し方ないかもしれません。だれも責められません。みんなもう冷静ではなくってしまっているのです。
しかし、もしもこの先流行が拡大して外を出歩けなくなってしまったり、あるいは自分が感染してしまい、買い物に出かけられなくなってしまうという事態が起こった場合に、自宅に2週間くらい軟禁生活をしなくてはいけなくなる可能性はありえます。
そんな非常時に備えるという意味で、カップ麺や缶詰、冷凍食品なども買い占める人は多いかと思いますが、そんな方にもおすすめしたいのが鰹節です。しかも、削っていない一本丸々の鰹節です。日本人が長い年月をかけて研ぎ澄ませて完成させた究極の保存食。今回はその魅力をお伝えしたいと思います。
賞味期限は気にしない。良質なタンパク質をいつでも摂れる最高の食材
誤解があってはいけないのですが、食品表示上の賞味期限はもちろんあります。しかし、それは鰹節屋さんが商品としてパック詰めした日から始まる期限であり、期限付けもお店によってマチマチ。科学的な根拠によって出された日にちではありません。鰹節屋さんも鰹節の熟成の具合を見ながら適宜パック詰めしているわけですから、鰹節という姿になってから何日が期限というような世界ではありません。(ただし、削り節は風味が落ちていくので鰹節屋さんが設定した賞味期限内の消費をお勧めします)
では、なぜ賞味期限を気にする必要がないかというと、もともと鰹節というのは保存食なわけですから、いかに腐敗せずに長持ちさせるかという工夫と執念の集大成。そう簡単に腐ったりするものではありません。むしろ期限内であっても、湿気の多い暖かい場所においておけばカビも生えます。時には虫がつくこともあります。だから、大切なのは、期限の日数を見ることではなく、鰹節そのものを見るということです。そうやって向きあうことさえできれば、賞味期限というのはとくに気にすることはありません。貴方の目が期限を判断すれば良いのです。
そして、そんな鰹節ですが、「食材」と考えるとこれまた非常に優秀なのです。なにせ良質なタンパク質が主成分、栄養素が凝縮されていますので、削ってご飯にかけてお醤油をかけて食べるだけで元気が出ます。戦国時代の武士は、鰹節と味噌と玄米を懐に入れて戦に出て行ったと言います。(現在の鰹節が完成したのは江戸時代ですから、戦国時代の鰹節は今とは多少違うものだったとは思いますが)
鰹節は勝男武士と書いて、験(ゲン)担ぎをしたとも言います。それくらい力の源である鰹節。現代において、非常時用に缶詰やレトルト食品、カップ麺などを用意しておくのも必要ではあるかもしれませんが、けっこうスペースをとります。鰹節は1本あれば、それらの何倍もの量の仕事をしてくれますから省スペース。もともと究極まで水分を抜いていますので、生魚の状態から比較すると1/6にまで小さくなっています。つまり300gの節が1本あったとすると、1.8kgの鰹の生肉があるのと同じことになります。しかもそれが、常温で相当な日持ちするというわけですから、こんな便利なものは他にはありません。
鰹節の栄養に関しては、ニンベンのサイトに詳しく載っているのでそちらも参照いただきたいですが、一番のメリットとしては素晴しい栄養分により、とにかく「元気」が出ます。そして香りによる「ストレス緩和」があり、不安な篭城生活の相棒として素晴らしい仕事をしてくれることは間違いないでしょう。
削りたてが楽しめる。出汁ガラも食べられる。
鰹節が1本まるのまま自宅にあるということは、美味しさと同時に安心があるということでもあります。
ひとつデメリットがあるとすると、どうしても削る作業が必要になるということ。世界一硬い食べ物としてギネスブックに載っているくらいですから、とてもそのままかじって食べる訳には行きません。削る作業はたしかに面倒ではあったり力のかかる作業ではあります。そのハードルだけが唯一のデメリットです。しかし、世の中便利で、女性の力でも簡単に削れる回転ハンドル式の削り器も市販されています。
もちろん、本格的なカンナ台の削り器があったほうが微調整もしやすいので、個人的にはお勧めですが、普通の人はそこまで使いこなす必要もないですから、こういった手軽なものでも良いと思います。
これがあると、いつでも削りたての鰹節を自宅で手にすることができます。(コーヒー豆で言えば、挽きたてが味わえるということです)削りたては香りが最高です。つまり、出汁を引いたら、最高に香りが良いかつお出汁が取れます。そしてその出汁ガラは食材として別の料理に使えば高タンパクの栄養の塊としておかずになります。この魅力は、非常時に限らずいつでも自宅でそんな贅沢が実現できるということでもあるのです。そして、非常時にはこの装備はそのまま非常食として大活躍するということになるのですから、こんな素晴らしいものは他に無いと思うのです。
味噌や醤油の発酵調味料と合わせれば、もう最高のパワーと美味しさで私たちの力となってくれることでしょう。自分の体は自分の力で回復していくしかないわけです。食べたものが明日の自分を作ります。薬で治るわけではないのですから、怪しいサプリなどにお金をかけるよりもよっぽどこういった伝統食材を頼りにした方が間違いがないはずです。
乾物を見直す良い機会にしよう
今回は、鰹節にスポットをあてて、非常時の食材としての魅力に迫りましたが、実は日本に昔からある乾物はすべて鰹節同様に栄養的な魅力を語ることができます。煮干しや昆布、乾しいたけ、切り干し大根、高野豆腐、かんぴょう等々。どれも自宅に常備し、平時の料理にときどき使って消費しながら、ストックを少しづつアップデートしながらも非常時に備える、というのが現代において、とても賢い生き方であると思っています。
スーパーの乾物コーナーはあまり行かないエリアかもしれませんが、乾物はうま味の宝庫であり栄養の宝庫。ぜひこの機会に素晴らしさを見直していくことをお勧めしたいのです。この先、コロナウイルスに感染しないように心がけつつも、万が一のときに備えるためにも、見直されるべき存在なのではないでしょうか。 Survive yourself !