タイトルからして何を言っているんだろうと思われるかもしれませんね。やっかいですみません。
えー、今回は味噌汁のだしについて、発想を変えてみようという試みです。
まず、最初に思ったのは、だしって、鰹節や昆布、煮干しやしいたけなどいろいろありますが、そのだしガラというのは、まあほぼ捨てられる運命にありますね。
しかし、栄養成分の摂取という考えからすると、実はだしには数パーセントしか溶け込んでおらず、だし素材の栄養を得ようとするならば、むしろだしガラを食べた方がいいのです。しかし、なかなか食べると言っても毎度毎度佃煮にしても飽きるし、食べるのにも限界がある。困ったもんだ、と日頃思っていたのですが、そうか、それならば、そのまま味噌汁の具にしてしまえばいいのではないかと考えたのです。
だしガラの健康成分とは
本題に入る前に、まずだしガラの栄養成分についてお伝えします。たとえば昆布の場合、食物繊維が豊富です。なので、腸のお掃除になります。しかも水溶性食物繊維の「アルギン酸」や「フコイダン」も含まれていますので、脂肪や糖の吸収を穏やかにしてくれます。次に、鰹節はタンパク質を豊富に含んだアミノ酸たっぷりの元気の元。疲れた時に摂取するとベホイミ並みにパワーが回復します。煮干しはカルシウム豊富でしかもカルシウムの吸収にかかせないビタミンDも含まれているので、骨に良い。青魚特有のDHAやEPAなど不飽和酸の良質な油も入っています。さらに乾しいたけには免疫力を高める「レンチナン」、悪玉コレステロールを下げる「エリタデニン」や、抗がん作用などを豊富に含んでいます。つまり、およそ聞いたことのある成人病予防の成分がほぼ全部含まれているわけです。これだけ聞くと、もうサプリなんて要りませんよね。
で、その成分のほとんどはだしガラの方に残っているということなのですから、もういっそ具にしちゃいましょうよ。ということなのです。
どうすれば具として成立するか
しかし、出汁ガラを具にするというのも、なかなか悩ましいところ。たとえば、子供の頃、家の味噌汁に煮干しが丸のまま入っていたら、なんとなく「ハズレ」を引いたような気持ちになりませんでしたか?
「健康に良いから食べなさい」と言われても、なんだか気が進みません。やはりあの魚の丸のままの見た目が良くない気がします。花形の豆腐やおあげ、ワカメなどがいると、ちょっと残念食材に見えてしまいます。鰹節なんて、どれだけ茹でてもモサモサしていますから、あんまり食べるような感じはしません。昆布は硬くて食べにくいし、味噌汁程度では味も染みません。唯一乾しいたけはそのまま具になっていても全然OKかな。といった具合です。
でも、そういうモヤモヤ感というのは、もしかして豆腐やネギなどメインの具材があるからこそ、ガラとして入っていると気持ちが落ちて食欲を失ってしまうかもしれないけれど、そもそも具のメインとして切り方や処理の仕方を変えることで、頭の中で意識のスイッチが切り替わり、美味しく具として食べられるんじゃないか、と思ったわけです。つまりパラダイムシフトなわけです。アクサダイレクトみたいな感じです。
いかに具と思わせるか
ということで、工夫しましょう。まずは、具に入っていたら気持ちが落ちるナンバーワンの煮干しから。
こちらは、頭、骨、内臓を丁寧に取り除き、完全に身だけにすることにします。これだったら、苦味や硬い食感など、見た目や食感のマイナスポイントをなくすことができます。ちょっと面倒ですが、この一手間をすれば具として認識できるようになります。
次に、昆布と乾しいたけ。
こちらはもう、ひたすら細かく刻む、というのが良いと思います。しいたけは普通に具としてありえますし、昆布も刻み昆布にすることで、ちょっとした茎わかめ気分でいただくことが可能になります。刻むことで早く煮えるという利点も生まれてきます。
ということで、作りましょう
説明が前後してしまいましたが、まずは、処理した煮干し、昆布、乾しいたけを水につけて一晩おきまして、だしをコールドブリューします。
翌朝、一煮立ちしたところで、昆布としいたけを取り出します。
とんとんとんとん刻んだら
だしの中に戻して、コトコト煮ます。だし用の昆布はある程度長めに煮ないと柔らかくならないので、よく煮ます。(だいたい5分くらい)このあたりはどんな昆布かにもよるので、時々味見をして気に入った食感になるまで茹でましょう
「そんなにぐつぐつ煮出したら、磯臭くなったり、だしの風味が飛んでしまうでしょうが」というツッコミは入るかもしれませんが、ソコソコ美味しく、栄養を摂取するというテーマにシフトするわけですから、そのあたりは無視します。
浮いてきたアクはある程度は取り除きますが、昆布のネバリ成分も水溶性食物繊維ですから、あまり取りすぎないようにしましょう。
まあさすがに色気がないので、最後にちょっと青菜を足します。
そして、お味噌を溶いて仕上げます。
完成です。
すくってみましょう。
うん、全部具として入っている感がありますので、「けけけ、なんだ、だしガラかよ。」と落ちる気持ちが不思議と起きません。
煮干しも、骨や内臓、頭がないので、むしろ具として美味しい。カタクチイワシの煮干しは煮込むと結構柔らかくなるので、食べやすい。
昆布はグニュっと感、しいたけはコリコリ感、青菜はシャキっと感がそれぞれあって、全体的に食感も楽しいバランスとなっています。
「この味噌汁、最高ですねー。」
思わず自画自賛してしまったわけですが、なんだか具沢山でリッチな気分になるくらい美味しくいただけました。ザルで濾す手間もなく、むしろいつもより楽な気がしたくらいです。
これなら、味噌汁の具を買うの忘れた!というときでも、乾物をそのまま具にできてしまいますので、お財布にも優しい。
しかも、健康成分が全部摂取できる。良いことづくめ。
馬子にも衣装。見た目や存在のさせ方で、料理って右にも左にも行くんですね。
ということで、今日は味噌汁をパラダイムシフトしてみようという提案でした。料亭のお吸い物とは対極をいく、素材のアクも匂いも成分も全部そのままいただく、日本酒でいえば寺田本家のようなものかもしれません。
(鰹節はどこに行った、というツッコミは一旦無しでお願いします)
ちなみに、まだまだパラダイムシフトしていける可能性があるように思っていますので、今回はその1としました。第二弾も構想があるので、お楽しみに。
つづく。