今回は、水の硬度の違いによって、おなじ素材で出汁の出方がどう変わるかの実験をしてみたいと思います。
用意したのは、4種類のお水。
硬度の低い順に
●鹿児島の温泉水
●南アルプスの天然水
●エビアン
●コントレックス
です。
硬度はご覧の通りです。
(ちなみに、pHもそれぞれ違うので、純粋に硬度だけの違いではないのですが、そのあたりは一旦ご容赦ください。)
硬度が低いほど軟水、高いと硬水です。
書いて字のごとく、軟水は口当たりがやわらかく、大げさにいうとねっとりした感じで、硬水はキリっとした感じです。
この違いが出汁にどう影響するのか、検証します。
では、行きましょう。
用意したのは、築地吹田商店の山出し昆布。
部位による出汁の濃さの誤差を無くすため、こまかく千切ってよく混ぜ合わせました。
水1リットルに対して、10グラムの昆布を入れて、3時間漬け置きしました。
その後、ゆっくり火入れしていき、75度になった段階で火を止め、10分静置。60度前後になったところで濾しました。
左から、温泉水、南アルプス、エビアン、コントレックスです。
まずは、見た目です。
温泉水と南アルプスは、ほとんど違いが無く、淡い透明な出汁が出ています。エビアンは。色にそれほど差はないのですが、少しアクが浮いています。そして、コントレックス、これは明らかに濁っていて白濁しています。
味わいにはどのように影響するのでしょうか。
官能チェックします。
まず、温泉水。
うん、美味しい。
昆布の出汁がとても良く出ています。しかし、少々出過ぎているというか、まったりとした口当たりが昆布のとろみと相まって、ちょっと行きすぎな印象もあります。
次に南アルプスです。
うん、実に美味しい。
昆布の旨みと甘みと口当たりのバランスが、とても良いです。4つの中で一番グッド。
次にエビアンです。
ちょっとアクが浮いています。昆布の雑味も出てきたのか、まろやかな旨みは減って、キリリとした出汁となっていました。まあ、まずくはないですが、これだけだと、ちょっとどうかなという印象。
最後にコントレックス。
ご覧の通りの濁り具合。さすが、温泉水と1000倍近く硬度の差があるだけに、見た目もとても違います。同じ素材でここまで違って出るというのが驚き。
味わいは、、、
うむむむ。これはいただけない。
雑味だらけ。
出汁も出ているが、出汁以外の余計なものも全部出てしまった印象。全くおいしくありません。
やはり、日本の食材には日本の水が一番合うのでしょう。
今回、軟水であればあるほど昆布の出汁が美味しく出る傾向がありました。しかし、温泉水の超軟水までいくと、ちょっとやりすぎ、というのも分かりました。一般的に日本はヨーロッパなどに比べると、軟水と言われますが、その中でも関西は軟水、関東は硬水の傾向があります。関西は昆布の文化と言われますが、水質の違いが出汁の文化の違いにも出ているのでしょう。江戸時代の物流の影響による文化の違いもありますが、地域それぞれに定着する出汁というのは、その土地その土地の水による影響もあるのではないかと思いました。(そういった意味では、実験に六甲のおいしい水も入れた方がよかったかなと反省)いずれにしても、ここまで顕著に差が出たのが非常に興味深い結果となりました。
教科書に書いてあることを文字の知識だけで覚えるのではなく、自分で実際にやってみることで、実にいろいろな発見があるなと思うのでした。
次回は、これらの昆布出汁を使って、鰹節を加えて合わせ出汁にしたときにどう違いが出るかをお伝えしたいと思います。