日本カツオ学会というのがありまして、東京越中島の海洋大学で集まりがありました。「かつお節の食品的・文化的価値を考える」というテーマで様々な方が登壇してお話してくれるようです。参加無料ということもあり思わず参加。しかし、参加者ほぼ99パーセントが鰹に関わる仕事をしている人たちのようで、私のような好き者は多分いないんじゃないかという感じで若干アウェー感。しかし、大学の中くらいの講義室が満員になっており、熱気ムンムン。興味深いお話を聞けました。
このカツオ学会は、鰹節だけでなく鰹そのものの学会なので、いろいろな側面から鰹というものを研究しているようです。今回は鰹節にスポットをあてた会ということで、ここまで鰹節に特化した会は、学会としても初めてだそうで、参加できてラッキー。4時間みっちり鰹節トークを聞けました。
まず最初に登壇したのは、ニンベンの有名な荻野目先生による鰹節のお話。荻野目先生はだしソムリエの2級でも講義をしてくださる先生で、ザ・研究者という感じで、ものすごく詳しい話をしてくださいました。
一本釣りと巻き網での鰹節の筋肉組織の違いとか
脂肪分と削った時の粉になりやすいかどうかの関係性など、さまざまな数値とともに見せてくれます。
うん、めっちゃ、面白い。
粉になると、要するに削り節にしたときに歩留まりが悪くなるので、なるべく粉になる量を減らしたいわけです。
脂がのっていると、粉になりやすく、しかも巻き網で取れたほうが粉になりやすいというのが数値で見て取れます。
しかし、荻野目先生、限られた時間に言いたいことがありすぎたようで、ものすごい早口でスライドを進めるので、メモを取っている間に次の話に行ってしまうので、いくつか聞き損ねました。とくに、カビ菌のユートリティウム ハーバリオラムとアスペルギルス グラウカスの関係性のところがあっという間にすっとばされてしまい、長年のモヤモヤがモヤモヤのままとなってしまいました。
今度先生にお会いしたら、聞いてみたい。
その後、さまざまな鰹節に関係する方々が登壇して、限られた時間の中でたくさんのお話をしてくれました。
この方は枕崎の水産加工業組合の専務の瀬崎氏。
近年、日本近海に鰹が来なくなっているのは、フィリピン、インドネシア沖の産卵海域でまだ小さい鰹が乱獲されていて、北上して日本に来る前にとられてしまっていること。以前は、巻き網量も網の目を荒くして、小さい魚は逃すようにしていたのに、最近は目を細かくして小さい魚まで取るようになってしまったということ、しかし、外国の排他的経済水域での出来事に関して日本がとやかく言うことはできないこと、しかし、外国で安く荒節が作られて日本でカビつけしたものが、食品表示上国産と明記されてしまうことに対する不満など食の文化をまもりそして日本の経済も守るにはどうしたらいいのかというお話を熱くされました。
なるほど、いろいろなところで知らないことがたくさん起こっているんだなあ。。。
最後は全員が登壇してパネルディスカッション。いまや時の人となった永松真依さん(かつおちゃん)も登場し、会場は熱気がさらに増しました。
それぞれが鰹節に対する熱い思いを語り、業界を盛り上げていこうという感じで終了しました。
しかし、なんというか、当然ながら鰹節の鰹節による鰹節のための話が延々と続くのを聞いていますと、それぞれ小さい業界がそれぞれ我田引水をしたがっているようにも見えてきまして、本当の意味でのサスティナブルな社会というのはもうちょっと引いた広い視点で考えないといけないんじゃないかなあと、つい思ってしまいました。
わたしのような部外者からすると、鰹節に対する根本的な盛り上げ策というのはあまりなく、和食が世界文化遺産に登録されたから、それに乗っかろうとか、オリンピック需要のインバウンンドでもっともっと知ってもらおうとか、それ、他の業界でも言えちゃうんじゃないのかしらという空気を感じてしまいました。例えば、出汁でいえば昆布や乾しいたけ業界とのコラボとか、そういう業界同士の交流が少ないような気もしました。そういう意味ではだしソムリエというのはうまくやれば、良い架け橋になれるんじゃないのかなあとか思ったり。
ということで、楽しく勉強になったんですが、なんというか、すんごい狭い世界だよなあとも思った一日でした。
こちらは江戸時代の鰹節番付表。昔は土佐節が圧倒的に上位に入っていたんですね。(赤いシールが土佐節)
いま、土佐節を作っているところは3軒しか無いそうです。
土佐節かあ。味わってみたいなあ。