以前、マイタケのタンパク質分解酵素プロテアーゼの力を借りて、鰹節の厚削りで出汁をとることをレポート&おススメしました。
マイタケは、ある温度帯にすると、タンパク質を分解する酵素を非常に強く出すので、出汁の魚肉はアミノ酸に分解され、より旨みが増し、そして、出汁ガラはいつもより柔らかくなります。
この感動を別の出汁素材でもやれないかと考えていまして、
今回は、焼きアゴでやってみた、ということです。
焼きアゴは、関東ではあまり馴染みは無いですが、鰹節とも煮干しともちょっと違う、独特の旨みの出汁で大好きな出汁の一つです。最近は、スーパーの出汁パック売り場などで「焼きアゴ入り」というセールスコピーが踊っていることも多く、なんだか分からないけれど、美味しそう、というイメージで、不思議と流行っているような気もします。
そんな焼きアゴですが、いままでずっとモヤモヤしていたことがありました。
それは、「出汁ガラの魚体が硬くて、なかなか食べづらい」ということ。
このサイトを購読していただいている方ならご存知かと思いますが、出汁はもちろん、出汁ガラも捨てずに全部美味しく頂く、というのがテーマでもありまして、いろいろと工夫しながら美味しく食べる方法を探っており、
この焼きアゴに関しては、とにかく筋肉質の魚体が硬くて食べにくく、困っていました。
そもそも、焼きアゴは、筋肉質のトビウオという魚であることや、煮干しのように煮るのではなく、焼いてタンパク質を凝固させて凝縮させるという製法のために、魚体が他の素材以上に硬く硬くなっていきました。ですので、出汁をとったあとの出汁ガラの魚体は、とても好き好んで食べようと思えるような硬さではありませんでした。(まあ、それでも無理してマヨネーズつけて食べたりしていましたが)
そんな中、マイタケのタンパク質分解酵素の力を知り、これは、焼きアゴに活かせるのではないかということを密かに思い、今回ようやく実現できたというわけです。令和バンザイ!
前置きが長くなりましたが、始めましょう。
今回は、焼きアゴ二匹と、マイタケの中サイズ1パック、水1リットルを容器に詰めました。
そして、マイタケの分解酵素が一番出る60度近辺の温度になるようにヨーグルトメーカーをセットして、8時間醸します。
今回も醸してみると、かなり効果を発揮しているようで、出汁は少しシュワっと泡を出していまして、焼きアゴの魚体は少し崩れかけていました。
来てます、来てます!(って、写真を撮り忘れていましました)
8時間後、出汁と出汁ガラをより分けました。
まず、出汁。
今回も麦茶並みに茶色く透き通った出汁が出ていました。この茶色は、マイタケ由来のものなのでしょう。メイラード反応かな?
一口含むと、口いっぱいに広がるマイタケの旨みと香り、そして、追いかけるようにアゴ出汁の旨みがまろやかに広がります。
相変わらず、マイタケの香りはかなり強いので、やはり好みは分かれますが、好きな人はハマる味です。
たぶん、旨みも何もせずに出したアゴ出汁以上に出ていると感じます。
なにより、昆布を加えていないのに、まろやかな奥行きを感じます。
そしてそして!
今回、なにより興奮したのが、焼きアゴの魚体が柔らかくなったこと!
ホロリと手で解け、口に含むと、心地よい弾力とともに旨みが広がる魚体となっていました。
よっしゃー!狙った通りだ!
マイタケのタンパク質分解酵素のおかげで、硬くて食べられなかった焼きアゴの魚体が分解されて柔らかくなり、そして食べられる硬さになってくれていました。
ありがとう!
よし、これは、食べられる!
ということで、今回は出汁そっちのけで、食べることにしました。
まずは、フライパンでバターを溶かします。
マイタケの出汁ガラを炒めて水分を飛ばしていきます。
そこに、身をほぐした焼きアゴを加え、
味付けは、味噌にしました。
味噌バターと焼きアゴ&マイタケ。
美味しい予感しかしません。
完成!
題して
「マイタケ発酵、焼きアゴの出汁ガラ味噌バター炒め」
です。(ああ長い)
いただきまーす。
もぐもぐ
あー、美味しい。
お酒がススム君だ。
個人的には、いろいろと狙った通りになっていて、満足です。
そりゃあね、出汁ガラじゃないお魚を使えばこれくらいのレベルはすぐに出せるんですよ。でもね、この過酷な状態から美味しくしていくということに醍醐味があると思っていまして、命かけてます。出汁を取ったら、あとは捨てちゃうなんて、可哀想じゃない!全部全部美味しくいただくのが筋ですよ。はい。
ということで、今回は出汁の方はあまり言及できずでしたが、焼きアゴが柔らかく食べられるようになったという感動が伝わると嬉しいです。
だしと発酵。
この両軸のテーマは、まだまだ奥が深そうで、我ながら楽しくなってきました。次は何を醸して出汁にしようかな。
つづく。