今回、枕崎の見学では、大量生産の現場も見せてもらうことができました。
一本一本、家族だけで手作りをしている鰹節もあれば、
海外からの技能実習生を使って、大量に生産している工場もありました。
そこには、日本の向かっている二極化の縮図があるように思われました。
まずは下記2つの動画をご覧ください
一つ目は、タイコウさんが扱う鰹節を作る、宮下さんが作っている映像です。ご覧の通り、一匹一匹人の手で包丁でさばいて節にしていきます。
二つ目は、別の工場です。前半の機械のところで鰹の頭を落とし、内臓を取り、身に切れ込みを入れるというところまで、特別な技術は不要で流れ作業で大量に行われます。そして、大量に煮て、そして身を手で割り、焙乾へと進めます。とにかく効率を優先した作りになっています。(これ、工場萌えの視点からすると、かなりキュンときます。)
鰹節になる鰹が巻き網か、近海一本釣りかという、魚体の質もさることながら、作り方にも大きな違いがでています。
次に骨抜きの作業をご覧ください。
一本一本にかける時間が全く違います。
もちろん、どちらも最終的には出汁になる原料ですから、味が美味しければ、別に見た目や途中過程はどうでもいい?と思う人もいるかもしれません。
しかし、鰹節というのは、旨みをいかに逃さず凝縮させるかがポイントですので、魚体になるべく傷が少なく、しっかりと詰まった状態にしてあげらるかが結構大事。
雑に仕上げれば、やっぱり味も雑になっていってしまいます。見た目が綺麗なものは味もまた美味であるのです。
ということで、手間暇かければかけるほど、美味しい鰹節が出来上がるというわけです。
下記の動画は、鰹の骨を抜いたあとにすり身を塗り込んで綺麗に補修している作業です。
骨の隙間が残ったままになると、そこから割れてしまったり余計な空気が入ったりして旨みの凝縮に影響が出てしまいます。
しかし、現場でもしきりにおっしゃっていましたが、後者の大量生産も決して悪者ではありません。
なぜなら、日本の大半の食卓を支えているのは、この大量生産でつくられた鰹節だかです。こういった海外から連れてこられた安い賃金で働かされている人のおかげで、我々は安価で美味しい出汁を日常的に使えているというのもまた事実。そういった意味では、感謝しかない、というのが実感でもあります。
一般人にとっては、毎日A5ランクの牛肉が食べられないのと同じように、鰹節もニーズに応じた質があるのです。
荒節と本枯節の違いだけじゃないんですね。
問題は、おそらく前者の手間暇かかった鰹節が、仮に大量生産の5倍の労力がかかっていたとしても、値段は5倍にはできないということです。
牛肉はブランド牛の最高ランクですと、相当な金額でも支払う人はいますが、この鰹節となるとそうもいきません。
なので、労力の割に儲けが少ないわけで、この丁寧な鰹節を作る人がどんどん減っているのが現状です。
このまま安くて美味しいものだけを良しとしてしまうと、いつか本物の美味しい手作りの鰹節を作る人が居なくなってしまうかもしれません。
日本人なら誰しも脊髄レベルで美味しいと感じる鰹出汁が、実は絶滅危惧種。
やっぱり、おいしい手作りの鰹節という文化はこの先にも残していきたいですよね。
ということで、そういう志のある鰹節屋さんの鰹節は、高くてもたまには買うのがいいんじゃないかなと思うわけです。
今回見せてもらった部分もごくごく一部。
他にもより深く知っていけると良いなと思うのでした。