だしと発酵、暮らしとデザイン

丁寧で本物の日本の次世代の食生活を提案する、ライフスタイルWEBマガジン

だしについて

【検証】水の硬度による出汁の出方の違い 〜かつお節〜

投稿日:

前回、軟水から硬水まで4種類の水を使って、昆布の出汁の出方を検証しました。

今回は、その昆布出汁を使って、かつお節を加えて合わせ出汁にして、どのように味わいに違いが出るのかをレポートします。

今回も、前回同様に温泉水、南アルプス天然水、エビアン、コントレックスです。

かつお節は1リットルに対して10gの削り節を用意しました。こちらも、昆布同様に部位による味わいの差を無くすために、40g削ったあとに、よく混ぜてシャッフルしました。

昆布出汁をそれぞれ火にかけ、一度沸騰させたのちに1分置いてから削り節を投入。

2分ほど静置。

さらしで濾しとります。

これで完成。

同じことを4回繰り返して作りました。

左から、温泉水、南アルプス、エビアン、コントレックスです。

今回は、なんとエビアンが一番透き通っています。

前回、ややアクが出ていたエビアンですが、沸騰させていくと、そのアクがさらに出て来て、泡状になり、かつお節を投入した後には、かつお節がそのアクを吸っていくかのように、みるみると透明になっていきました。コンソメスープを手作りしたことがある人は分かるかもしれませんが、途中で卵白を入れてアクを吸わせて濁りを透明にするという工程がありますが、まさに同じような光景がエビアンで起こりました。(うっかり、写真を撮り忘れてしまったのが心残りです)

かつてない透き通った出汁が取れて、ちょっと興奮。

 

では、テイスティングによる官能チェックに移りましょう。

まずは温泉水。

前回の出過ぎた昆布出汁の風味を引き継いでいるのか、まずくはないのですが、鰹の動物性の旨みのパンチがいまいち弱く、少々物足りない印象。口当たりはまろやかではあるのですが、なにかネムい。

うーん、65点。

次に、南アルプス。

温泉水よりもやや濁りが出ていました。しかし、香りは良く立っていて、口当たりも良く、なかなか美味しい鰹出汁。うんうん、80点。

しかし、濁りが少々出てしまったのは残念。温度帯が少々高過ぎたのか、あるいは、温泉水以上に鰹の成分がよく出る硬度だったのか。いずれにしても、鰹の成分が出ているような味わいがしました。たぶん、関西の人は、これが好きだと思います。

次に、エビアンです。

ご覧ください。この透明感!

まさに、黄金出汁といえる琥珀色の透き通った出汁が取れました。

そして、なにより、キリっとした口当たりが、動物性の旨みをよく出していて、とても美味しい。昆布のまろやかさは影に隠れましたが、ザ・かつお出汁を味わうなら、むしろこちらの方がいいのかもしれないとも思いました。これは濃口醤油によく合いそう。95点。

最後にコントレックスです。

こちらは、、、

まずいです。

昆布の段階からまずかったのをそのまま鰹でも引き継いで、まずいママでした。さすがにコントレックスは出汁には向かないですね。濁りもさらに悪化しているようでした。却下。

今回、とても興味深かったのが、昆布は南アルプスが一番だと感じたのに対し、鰹はエビアンが一番だと感じたことです。

動物性の料理には硬水が合うというのがまさに当てはまるのだなと実感。

そうなると、鰹出汁を楽しむ料理を作るときには、関東の場合には、水道水でも全然大丈夫なのかもしれません。無理にミネラルウォーターを買わなくてもいいのかも!?なんて思ってしまいました。(まあ、浄水器は通した方が良いですが)

硬度による出汁の違い、とても興味深かったです。あまりに極端な軟水や硬水は出汁には向きませんが、程よい軟水、硬水の領域では、出汁の出方が変わってくるので、昆布主体の出汁の料理にするなら軟水、鰹主体の出汁にするなら硬水が良いというのがわかりました。料理にあわせて水を使い分けられるならば、すごく面白いことになりそうだなあ、なんて思ってしまいました。

次回は乾しいたけでも試してみたいなと思いました。

いずれにしても水は、硬度以外にも、pHによる違い、水素水、炭酸水など、まだまだいろいろな尺度がありそうなので、きっとさらに奥深い世界があるように思います。少しづつ紐解いていけると面白いなと思います。

つづく。

-だしについて

執筆者:

関連記事

待って!その昆布、捨てないで!

出汁を引いたあとの昆布には、栄養の99.9パーセントが残ったまま 今日のテーマは昆布です。 ある人から聞いた話では、とある京都の料亭では、湯豆腐は最高級の利尻昆布を客の前で鍋の手前からすーっと入れて、 …

だしを美味しく引き出す適正温度とは

  美味しい出汁を引くには、適正温度があります。 ただ、人によって言うこともまちまちで、何が正解なのか、分からなくなることがあります。 ぼくが信頼する書籍や料理人からの発言を引用すると、 下 …

【作り手物語】阿波の国 一夜だし膳 〜河口 晶〜

作り手物語、第二回目は徳島でだし伝道師として精力的な活動を続けていらっしゃる河口晶さん。煮干しと昆布を水出し用にチューニングして使いやすいだしパックをクラウドファウンディングで商品化しました。煮干しと …

切れていない昆布を買ったときの、出汁のとりかた

そもそも、昆布なんて普段買わない!という人が大半だとは思いますが、 まあそれは聞かなかったことにして、 今日は、切れていない長い昆布を買ったときの出汁の取り方をご紹介します。   出汁を極め …

味の素に聞いてみた。

本物を極める出汁野郎にとっては、「味の素」っていうやつは、まがいもので健康に悪くて味覚音痴になる、というケチョンケチョンの言われっぷりで目の敵にされています。 たしかに、本物の出汁と、ほんだしをお湯に …

だしと発酵、暮らしに関するヒントをデザインの視点を交えてお届けします。

2025年8月
« 1月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031