そろそろ枕崎の振り返りも終盤になってきました。
今回は、「鰹は捨てるところがない」ということをお伝えします。
よく鯨や羊は捨てるところがないと言われます。食肉だけでなく、あらゆる部位が何かに役立てられるということで、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
もちろん、牛や家畜だってさまざまに有効活用されているとは思いますが、共食いによる狂牛病などカニバリズムによる悲劇もあります。鰹に関しては聞いた限りでは、かなり良い循環をしているように思われました。
では、ご紹介します。
まず、鰹節にするために鰹は各部位に解体されます。
背骨部分は、骨の周りの肉は、鰹節を補修するためのすり身になります。
骨そのものは、肥料やペットフードなどのカルシウムに使われるそうです。ペットフードで「カルシム増量」などと書いてあるものはこういったもの由来だそうです。
内臓は、酒盗(塩辛)になります。これはお酒のお供です。
腹身は、脂が乗った美味しい部位として、塩焼きなどにして現地で食べられています。
(私も前日の宴会でいただきましたが、実に美味しかった。。。東京でも売ればいいのに。)
そして、解体中どこからともなく回収業者がやってきて、部位をトラックに入れて回収していきます。
スタジオで撮影中にホリウチカラーがポジを朝夕回収に来るのと近い感覚。(←といって伝わるのはフィルム時代のカメラマンだけ)
おそらく、枕崎の市内の鰹節製造屋さんを巡回しているのでしょう。荷台にそのまま放り込まれていました。うん、ワイルド。
次に、煮熟という生の鰹を茹でる工程があるのですが、ここで茹でられた茹で汁も業者が回収していきます。
こちらの汁は、よく即席麺の食品表示に「かつおエキス」と書いてありますが、このゆで汁が「かつおエキス」になっていくんだそうです。
なんだってー。完成した鰹節のエキスじゃないのかーー。騙されたー。
次の工程で、茹でられた鰹は、煙で燻されて鰹節となっていきますが、
何度も燻されて真っ黒になった鰹節は上記のようなグラインダーで削られます。
ここで削られて出てきた粉も回収されます。
この粉は、だしの素などになっていくそうです。なんだってー。
部位もさることながら、煮汁や粉まで、捨てるところなく使われるというのは、なかなか無いのではないでしょうか。フードロスなど叫ばれていますが、この鰹節製造においてはむしろロスするところが無いくらいにとことん使われているという印象。
MOTTAINAI精神が宿っているようで、おもわず、いいぞいいぞと思ってしまいました。
(こういう話が、どうも私は琴線に触れるポイント)
そして、最後に残った身の部分が、晴れて鰹節になっていくわけですから、これは美味しいわけです。
なんて思いながら出汁をすすると、また味わいもひとしお。
出汁がうまい、感謝だなぁ。(みつを)
ちなみに、回収業者は土日がお休み。
よって、鰹節製造の人たちも土日に解体しちゃうと、回収してもらえないので、みんな土日休みです。小さな街ですから、東京のようにあくせくしていません。自分だけ出し抜いてやろうというような輩もいません。(たぶん)
街に入るとそこら中から、ほのかに鰹節の香りがします。
夜はさつま白波をやりながら、鰹談義かな?
都会と比べたら娯楽もあまりないでしょうから、ここで生まれ育った人にとっては退屈な町に感じることもあるかもしれません。しかし、東京で暮らしている私にとっては、この1泊2日がなんだかとてものんびりした気持ちを貰ったようにも思いました。隣の芝生なのかもしれませんが、何をもって豊かな生活とするか。そういったことも考えさせられる旅でありました。
地方の町にある共通の問題として、次世代を担う若手が居ないこと。
外国人労働者に頼らざるを得ないこと。ありがたい反面、期間限定であるため、スキルが上がらないこと。かつては漢字文化圏の労働者が多かったけれど最近は東南アジア圏の労働者が増えて、筆談もできないので、コミュニケーションが難しくなっていること。
鰹を燻す薪になる木はたくさん生えているけれど、肝心の木こりが減ってしまったこと。
一つの産業に依存している比重が大きいので、ひとたび不漁となると町中が大変になってしまうこと。
などなど、さまざまな問題はあります。
しかし、だからこそ、そこに住む人は一致団結して、街に対する愛着というのもあるように思いました。
<枕崎><鰹節>のひし形のロゴマークのTシャツを着た人の多いこと多いこと。
勝手ながら、きっとこの街は大丈夫に思えました。
今回このツアーを企画してくださったタイコウさん、ありがとうございました。
普段このサイトではあまり人の顔は出しませんが、みなさん顔出しOKとのことでしたので、今回最後にみんなの集合写真を載せておきます。
それぞれこだわりの食のプロフェッショナルである方ばかりでとても刺激をいただきました。
みなさん、またどこかでお会いできる日を楽しみにしています。
手前真ん中が宮下さん一家。奥の真ん中に光るのがタイコウの稲葉さん。手前右から二番目の女性がタイコウの次世代を担う大塚さんです。私はどこかな♪
枕崎シリーズ。おしまい(たぶん)