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玄米を美味しく炊きたい 2

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さて、玄米を美味しく炊く挑戦シリーズ2回目の記事です。

 

前回、玄米が美味しくない理由として「匂い」「食感」「味わい」の三点をあげました。

「匂い」に関しては、炊くときに塩と酒を入れると糠臭さが軽減されるということが言われています。また、ヨーグルトを入れると良いという人もいます。

「食感」に関しては、吸水の仕方や炊き方の火加減、蒸らしなど、ちょっと職人的な作法によるところが大きいです。

で、「味わい」に関しては、私としては、玄米をもぐもぐしたときのご飯の甘みを感じられるかどうかで、クリアしていけるのではないかという仮説のもとに、今回の炊き比べをしています。

炊き方のパターンとしては繰り返しになりますが下記を行いました

 

1. 24時間30度の水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

2. 48時間30度の水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

3. 24時間30度でヨーグルトを混ぜた水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

4. 48時間30度でヨーグルトを混ぜた水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

5. 24時間30度の水で発芽させた後、60度で8時間保温し、圧力鍋で炊く

6. 24時間30度の水で発芽させた後、60度のお湯に米麹を加えて4時間保温し、圧力鍋で炊く

7. 24時間30度の水で発芽させた後、60度のお湯に米麹を加えて8時間保温し、圧力鍋で炊く

8. 比較のために、浸水してすぐに炊飯器で炊く

 

この炊き方の狙い所は前回記事をご覧ください。

 

今回は実際に炊いて食べ比べてみたことをレポートします。

 

浸けおく時間と温度で、水の糖度が変わる

これは、糖度計のメモリを撮影したものですが、

浸け置き1日で見てみると、ご覧の通り、糖度は0です。pHは下がるので、酸性に傾いただけの液体です。

で、それを48時間つけておくと

ご覧のとおり、ちょっと糖度が出てくるんです。

飲んでみると確かに、ほんのり甘い。発芽した芽から出るアミラーゼ酵素がデンプンを分解してくれていることが実際に数値に現れたので、ちょっと興奮します。

さらに麹を加えて醸すと、さらに甘みが加わり、下記のように。


で、この漬け汁も一緒に炊くことで、水に溶け出した甘みが米に戻っていくというわけです。

 

長く浸けておいても、食感にそれほど影響無し

ただ、一つ心配なことは、長い時間浸けておくと、それだけふやけてしまうので、

同じように炊飯したときに、ベチョベチョになってしまうんじゃないだろうか、という不安がありました。

しかし、実際に全てやってみたところ一番過酷な

7. 24時間30度の水で発芽させた後、60度のお湯に米麹を加えて8時間保温」

で炊いても、ベチョべチョになることなく、普通に許容範囲の食感。糠部分の硬さはこれくらいの酵素では分解されないようです。なので、米粒もちゃんとそのまま残ります。もちろん中身のコメ部分もベチョベチョはありません。(多少はやわいですが)

 

 

米の甘みは、醸せば醸すほど増す

実際に食べ比べてみると、やはり7番目が一番甘くなりました。口に入れてもぐもぐするとすぐに甘みが口の中に広がるという不思議な状態になりました。あとは程度の問題で、どのあたりを一番美味しいと感じるかということが一番のポイントになりそうです。

ちなみに、炊き上がった米を糖度計にかけたのですが、もともと糖度計はフルーツの果汁の糖度を図るような光学式屈折糖度計なので、米粒のような固形物ははかれません。

 

そこで、すり鉢ですりつぶして、3倍の水を加えてよく混ぜて、上澄み液を図って、その数値は4倍にすれば米の甘さが測れるかなと思ってやってみたのですが、

これがなかなかうまくいかず、エッジがぼやけてしまったり、全部真っ白になってしまったりして、なんとも言えないのですが多分糖度12くらいまで上がっているのではないかと思われました。(かなり怪しいけど)

たとえばこの写真は7の炊いた米を希釈した水を図ったものなので、×4したらそれなりにかなり甘い数値になるわけです。

 

それぞれの味の傾向

いろいろと前置きをダラダラと書きましたが、

食べ比べるといくつかの傾向がみられました。

 

1. 24時間30度の水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

2. 48時間30度の水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

まず、この2つですが、やはり2番目の方が美味しいですが、玄米の乳酸菌による発酵の香りもより強くついてしまうところもあり、匂いの問題が出ました。

 

3. 24時間30度でヨーグルトを混ぜた水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

4. 48時間30度でヨーグルトを混ぜた水で発芽させた後、圧力鍋で炊く

次にヨーグルト系ですが、これはね、結構美味しいんです。乳製品の香りがコメについていて、糠臭さを押さえ込んで、ちょっとコクがでていて、シチューやカレーなどと一緒に食べると美味しいだろうなと思うのです。

ただ、これで焼き鮭と味噌汁と納豆の純和食を食べるとなると、ちょっとハテナなところはあるかもです。ヨーグルト使うときは、洋食系の料理のときにやると良いのかも

 

5. 24時間30度の水で発芽させた後、60度で8時間保温し、圧力鍋で炊く

6. 24時間30度の水で発芽させた後、60度のお湯に米麹を加えて4時間保温し、圧力鍋で炊く

7. 24時間30度の水で発芽させた後、60度のお湯に米麹を加えて8時間保温し、圧力鍋で炊く

最後に60度のアミラーゼバリバリ系ですが、これは結論からいくと、個人的には6番が一番美味しく感じられました。

5番も悪く無いのですが、甘みからくる美味しさのバランスが6番が一番美味しく感じられました。7番はさらに甘いのですが、ちょっとやりすぎな感じがあるのと、今度は麹が醸された、いわゆる甘酒の香りが玄米全体に回ってしまっているので、米の味わいのそれとは違ってしまっているようでした。なにごとも程度とバランスが大事。

 

ということで、総括すると、

6. 24時間30度の水で発芽させた後、60度のお湯に米麹を加えて4時間保温し、圧力鍋で炊く

というのが、一旦私の中では一番美味しいと感じました。炊きたての美味しさは感動レベル。

今回は、危機をつかって数値を図ったりして、なるべく客観的な答えを出したいと思ったのですが、

なかなか難しいところもあり、また米の美味しさの指標ってそもそもそこの数値でいいんだっけみたいなこともあるので、最後はやはり自分の舌を信じるしかないというところに行っちゃったのですが、まあ個人でやるには限界があるかな。

 

 

いずれにしても、この美味しい玄米の炊き方、

超面倒くさいですし、そんな機器をもっていない人の方が圧倒的に多いので、現実的とはいえないので、

次回は、今回の傾向を踏まえて、炊飯器を使って美味しく炊ける炊き方に落とし込んでいけると良いなと思っています。だれでもその気になればやれるレシピを作りたい。

 

今回の手法で、美味しく玄米が炊けると、白米を超えるとまでは言えないまでも、

「おいしくなーい」というレベルは軽く超えていけます。

家族も普通に文句も言わずに食べてくれていますし。

炊きたてはかなり美味しいです。

浸水しないでノーマルで炊いてしまうと、冷凍して保存したあとにレンチンするとポソポソになってしまうのですが、手間をかけた玄米はレンチンしてもちゃんと美味しい。

このあたり、丁寧に勝るものは無しというところですね。

あと、糖化させた玄米は、鍋で炊くと、おこげが出来やすい!

これができるとかなり美味しいです。糖化のおかげですね。

 

とはいえ、さすがにね、今回玄米炊きすぎました。ちょっと飽きちゃいました。ハハハハハ。

あーあ、白米食べたいなあ。(←おい!)

あらためて銀シャリっての美味しさに気がついてしまう。。。そりゃあ江戸時代の人が、玄米を見捨てて白米を食べすぎて江戸わずらいになったわけだ。玄米を美味しく炊く方法をやればやるほど、改めて白米の美味しさに気づいてしまうというパラドックス。いろいろと思いを巡らせた日々でした。

 

でも、これからも玄米を美味しく食べますよ!遊び遊びね。

 

つづく。

 

 

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